お正月の風習は、地域によってずいぶん違っていて、びっくりすることがありますよね。北海道のお正月を彩る「口取り菓子(くちとりがし)」も、その一つ。タイやエビなどの形をしたお菓子で、単に「口取り」とも呼ばれます。
一般的には和菓子の「練りきり」なのですが、1年に一度しか出回らず、一口サイズの小さいものから、ドーンと大きいものまでさまざまです。
おめでたい松竹梅や、ツル、カメ、十二支などのほか、なぜかサクランボの形が定番。これを見ると、道産子は一気に年末気分になるのです。
北海道おもしろ情報
2019.12.20
北海道のお正月を彩る
おめでたい口取り菓子
writer : 石田 美恵
年末のスーパーに登場する、口取り菓子の山!
北海道ではクリスマスを過ぎるころになると、スーパーマーケットの一角に売り場が登場します。かなりたくさん積み上げているお店も。種類も値段もいろいろで、数種類の盛り合わせがスタンダードですが、バラ売りもあります。どれもとにかく色鮮やか。
地元の菓子店はもちろん、パンの製造メーカーでも作っています。大きな売り場では青森県産も見かけます。お正月に口取り菓子を食べるのは、東北地方にもある風習なんですね。
お正月だけの甘〜いお楽しみ
割ってみると、なかにあんこが入っています。こしあんも白あんも使われ、あんの部分だけでなく、お菓子全体がすべて甘いことが特徴。濃い日本茶や抹茶によく合います(お茶がないと食べるのが結構大変です)。
年末から仏壇などにお供えし、年が明けてから、おせち料理の合間や食後に食べる、という家庭が多いようです。お正月だけの特別なデザート、といった感じでしょうか。
もともとは祝儀のお料理が、おめでたいお菓子に
調理用語の辞典によると、「口取り」は古くお祝いの料理で最初に出された「コンブ、のしあわび、かちぐりなどの祝儀の肴(さかな)」のこと。それがだんだん変化して、きんとん、伊達巻き、かまぼこなどの甘い料理になり、現代のおせち料理に残っているそうです。また、茶道の席で出されるお菓子のことも「口取り」といいます。
北海道は日本各地からの移住者が多い土地ですから、いろいろな食文化が混じり合い、独自の風習が根づいたのかもしれません。
ともあれ、色鮮やかな口取り菓子は寒さの続く北国で、食卓を明るく賑やかにしてくれる大切な存在。1月1日を過ぎるとほとんど売っていないので、年末に北海道を訪れたら、ぜひスーパーをのぞいてみましょう!
※こちらは、公開日が2017年3月24日の記事となります。更新日は、ページ上部にてご確認いただけます。
スマートポイント
- 北海道では、大晦日の夜からお寿司やおせち料理など、ご馳走を食べ続けるのが普通。もちろん年越しそばも食べるので、お腹がはちきれそうになります。
- お正月料理によく出てくる茶碗蒸し、北海道や青森では、なかにクリの甘露煮が入っています。
- 北海道のお雑煮は、地域や家庭によってかなり違います。すまし汁あり、味噌仕立てあり、丸もちあり、角もちあり、具材にあわびなど魚介類や、豚肉を入れるところもあります。
ライターのおすすめ
タイなどの大きい口取りは、なかなか一人では食べきれないので、何人かで分けていただきましょう。
石田 美恵
札幌出身。料理本編集者として東京の出版社に勤めたのち札幌にUターン。海藻と羊肉、鮭、お寿司が好きです。