小樽北部にある祝津(しゅくつ)海岸は、北海道らしい大きなスケールの「おたる水族館」があるほか、ヨットや水上スキーなどマリンスポーツが盛んなエリア。その祝津の高台に、美しい海を見下ろすように建っているのが、赤い屋根が印象的な「小樽市鰊御殿」です。
堂々たるたたずまいは、当時の繁栄ぶりを物語る貴重な存在。明治時代から昭和初期にかけて、日本海沿岸一帯で盛んだったニシン漁の歴史を、現代に伝えてくれる歴史的建造物です。
屋内には、ニシン漁の道具や生活用品などが数多く展示され、昔の衣装を着てみることもできます。かつてのニシン場親方になった気分で、記念写真はいかがでしょう?
観光
2017.06.06
ニシン漁を伝える歴史的建造物
小樽市鰊御殿でタイムスリップ
writer : 石田 美恵
親方のこだわりが詰まった巨大御殿
小樽市鰊御殿は、小樽駅から「おたる水族館」行きのバスに乗って約25分、終点から徒歩5分の場所にあります。もともとは1891(明治24)年から7年をかけて、小樽の西側にある積丹半島・泊村につくられ、1958(昭和33)年に現在の場所に移築されました。
建主は、「鰊大尽(にしんだいじん)」と呼ばれた青森生まれの親方・田中福松さん。最盛期には1万石(7,500トン)のニシンを水揚げし、約120人の漁夫と親方家族がここで生活していました。漁夫が寝泊まりする番屋と、親方家族が生活する住居は別のことも多いようですが、この鰊御殿は一緒の建物。福松さんは、同郷から出稼ぎに来た漁夫たちを信頼し、大切にしていたと伝えられています。
1階の広い座敷は、親方家族の生活スペースです。茶の間、寝間、仏間のほか、化粧部屋、酒部屋などもあり、とにかく豪勢。太い柱や梁には、道産のタモや本州から取り寄せたヒノキなど、約540トンもの木材を使用。ぜいたくですね〜。
入口に飾ってあるのは、「くろこべり」と呼ばれる船の飾り板。美しい唐獅子牡丹が刻まれています。
ニシン漁と加工の道具、生活用品などがズラリ
ニシン漁とその加工作業には、じつに多くの道具が使われました。それらの多くが御殿内に展示してあります。木製の箱は「もっこ」と呼ばれ、浜に揚がったニシンを入れて背負い、加工場まで運ぶための道具。これだけでかなり重そうですね。
ニシンを運ぶのは主に女性の仕事でしたが、忙しい時期は学校も休みになり、子どもたちも「もっこ背負い」に借り出されたそうです。
食用にならない小型のニシンや傷ものは、巨大な釜でゆでて肥料に加工されました。
ゆでたニシンは「角胴」に入れてしぼり、肥料にする〆粕(しめかす)と、油に分けられました。しぼった油はランプの燃料や石けんの原料などに使われ、すべてをムダなく活用。これらのニシン製品は、北前船で遠く関西まで運ばれ、北海道の貴重な産品として販売されたんですよ。
また、食器や台所用品など、生活の道具もたくさん展示してあり、じっくり見ているとあっという間に時間が過ぎます。
昔の衣装に着替えて記念写真も忘れずに
いろいろな資料の展示だけでなく、昔の衣装を着てみることもできます。写真は男性用ですが、女性用の着物もあり、スタッフの方に声をかけると、無料で借りられます。
せっかく着替えをしたら、好きな場所で記念写真を撮りましょう。
大きな囲炉裏の前に座り、キセルを片手に、はい、ポーズ! たくさんの漁夫たちをまとめ上げ、1万石ものニシンを水揚げした親方も、こんな風に寛ぐことがあったのでしょうか。
窓から見えるのは、青い海と港と、はるか遠くに続く山並み。歴史的建造物、小樽市鰊御殿には、明治時代にタイムスリップしたような静かな時間が流れています。
スマートポイント
- 見学する際は、スタッフの方に説明をお願いすると、パンフレットや解説には書いていないお話を聞くことができて、何倍も楽しめます。
- 春や秋などの肌寒い日には、入口で、手編みの足カバーを貸してくれます。スタッフの方の優しい心づかいに、足元も心も温まりますよ。
- 受付の横に売店コーナーがあり、前浜で水揚げされたニシンの加工品や小樽産のワインなどを販売しています。お土産も忘れずにチェックしましょう。
ライターのおすすめ
鰊御殿までのアクセスは小樽駅からのバスが便利ですが、お天気なら海上観光船がオススメ。小樽港の第3埠頭から乗船し、祝津港で下船しましょう(運行は4月下旬〜10月中旬)。約30分の船旅です。
石田 美恵
札幌出身。料理本編集者として東京の出版社に勤めたのち札幌にUターン。海藻と羊肉、鮭、お寿司が好きです。
INFORMATION
スポット名 | 小樽市鰊御殿 |
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住所 | 北海道小樽市祝津3丁目228 |
ジャンル | 歴史的建造物 |
電話番号 | 0134-22-1038 |
料金 | 大人300円、高校生150円、中学生以下無料 |
営業時間 | 4月9日〜11月23日 午前9時〜午後5時(10月17日からは午後4時閉館) |
定休日 | 開館期間 4月9日〜11月23日 無休 11月24日〜翌4月上旬 休館 |
駐車場 | あり |
備考 | HP : https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2020100900596/ |
地図 | 43.2377879 |