幕末の探検家・松浦武四郎が訪れるよりはるか昔から、阿寒湖のほとりではアイヌ民族の人々が生活していました。コタンとはアイヌ語で「集落」「村」の意味。アイヌは「人間」を意味します。阿寒湖アイヌコタンでは、シアターで古式舞踊の鑑賞ができるほか、民家を再現した生活記念館で生活用具や衣服などの見学ができます。個性豊かな民芸品や飲食店も約30軒が並び、見て歩きや食べ歩きも楽しめますよ!
観光
2019.12.16
自然を敬って生きる先住民族の
伝統を知る阿寒湖アイヌコタン
writer : 石渡裕美
まりもの里、阿寒湖畔にたたずむアイヌ民族の村
女満別空港・たんちょう釧路空港からどちらも車で約1時間、釧路市街地からなら車で約1時間30分ほど。特別天然記念物まりもで知られ、雄阿寒岳や雌阿寒岳をはじめ周囲を山々に囲まれた自然豊かな阿寒湖のほとりに、アイヌ民族の人々の伝統や生活を伝える阿寒湖アイヌコタンがあります。コタン入り口で出迎えてくれるのは「コタンコロカムイ(村の守り神)」として大切にあがめられたシマフクロウ!
広場をはさむように両脇に民芸品店、飲食店が並びますが、まずは坂を登った奥にあるアイヌシアター「イコロ」へと参りましょう。
歌と踊り、遠い昔から阿寒に伝わる古式舞踊に感動
シアターでは伝統ある古式舞踊を見学することができます。この踊りは北海道で唯一、国の重要無形民俗文化財に指定されている貴重なもの。
スクリーンに字幕が出るのでアイヌ語が分からなくても大丈夫。自然を敬い、タンチョウやクマといった動物を神として大切に敬うアイヌ民族の価値観にはっと胸を打たれます。
特徴あるリズムや独特の発声法も興味深く、動物たちが遊ぶイキイキとした情景が目の前に映し出されるかのような踊りに、グイグイ引き込まれていきます。民族楽器ムックリの弓を弾くような音色が木々の枝をわたる風のよう。威厳あるエカシ(長老)の所作の美しさも感動的です。男性の力強い動きと女性の優美な舞とのコントラストも素晴らしい!
夜の公演は力強く壮麗な「イオマンテの火まつり」です。イオマンテは「熊送り」とも呼ばれ、子熊の霊を神様の元へと送り返す大切な儀式です。ステージ上には火が灯され、水路も設けられて幻想的な美しさ。古式舞踊と音楽に、火や阿寒の自然をモチーフにした映像が組み合わされ迫力満点。
自然を尊び、共存した生き方に触れる生活記念館
シアターの外には、古い時代の民家を再現したアイヌ生活記念館やポンチセ(小さな家)があります。この家、すべて天然の素材だけで造られているんですよ。アイヌ民族の知恵はすごいなあと感心します。
室内には生活用具や衣服などの展示があり、暮らしぶりがしのべます。家族で囲炉裏を囲み、団らんしたり祈りを捧げる風景が目に浮かぶようですね。オヒョウやシナ、ハルニレの樹皮で作った「アットゥシ(樹皮服)」はアイヌ民族の代表的な衣服。見事な刺繍に目を奪われます。
ここでしか手に入らない木彫り民芸品や刺繍作品も
民芸品店では木彫りの作品を中心に、動物や鳥などをモチーフにした小物、アイヌ模様が施された美しいアクセサリー、アイヌ刺繍などが花畑のように並びます。オイナ民芸店では木彫り作品が充実。職人さんが作業をしている様子の見学もできます。一彫りひと彫りに心を込める作業ぶりに思わず目が釘付けに。
チニタ民藝店では、アイヌ文様の文房具や関連書籍も充実しています。自分用のお土産にもピッタリ。どちらのお店でも民族衣装を着て記念撮影もさせてもらえるんですよ!
道東産素材を使った料理やアイヌ料理もぜひ味わいたい!
飲食店もあります。丸木舟はアイヌ民族の伝統料理を取り入れた創作料理のお店。札幌の人気店・木多郎のスープカレーも食べられます。エゾシカ肉やギョウジャニンニクといった道東らしい素材を使った「縄文カレー」(1,304円。1日3食限定)はここだけの味です。爽やかなトマトの酸味にスパイスが効いたスープに、赤身牛肉のように味わい深いエゾシカ肉がゴロンゴロン。ギョウジャニンニクを噛み締めると、野性味あるニラのような味と香りがパーッと口いっぱいに広がって、うん、元気が出そう! ランチにもピッタリです。
アイヌ民族のおやつ、ボッチェもオススメ。初冬に雪に埋めたジャガイモを春に掘り出してつぶしてまるめ、発酵させた保存食です。発酵食品独特の香りにぼそりとした食感、素朴な味わいがクセになりそう。
アイヌ民族の伝統と文化に触れられ、ほかではできない貴重な体験ができる阿寒湖アイヌコタン。ぜひ訪れて北海道の先住民族である彼らの生き方に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
※こちらは、公開日が2017年7月21日の記事となります。更新日は、ページ上部にてご確認いただけます。
スマートポイント
- コタンの中央の広場は駐車場になっていますが、午後8時以降は利用不可。シアター前の駐車場を利用しましょう。
- 古式舞踊・火まつりの開園時間はホームページでチェックを。所要時間は約30分です。コタンや温泉街の民芸品店・飲食店では割引券を置いているところも多いので尋ねてみましょう。
- 4~10月は温泉街周辺を循環する「まりも家族バス」が無料運行され、便利(水曜は運休)。阿寒湖アイヌコタンやバスセンター、阿寒湖畔エコミュージアムセンター、遊覧船桟橋などを結びます。
ライターのおすすめ
古式舞踊を鑑賞したらきっとムックリが欲しくなっちゃいますね。民芸品店で買えるのでご安心を。伝統的製法のものと、初心者でも簡単に音を出せる改良版とが売られています。吹き方はお店でも親切に教えてもらえます。
石渡裕美
東京下町から札幌に移住して早20年。北海道LOVE、特に日高・十勝・函館が大好きです。
INFORMATION
スポット名 | 阿寒湖アイヌコタン |
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住所 | 北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目7-19 |
ジャンル | 観光 |
電話番号 | 0154-67-2727 |
料金 | 入場無料(古式舞踊鑑賞は大人1,080円、小学生600円) |
営業時間 | 民芸品・飲食店の営業時間 午前10時~午後10時(店舗によって異なります) 生活記念館 午前10時~午後9時 |
定休日 | 休館日なし(年末年始は除く) |
駐車場 | あり |
備考 | HP : https://www.akanainu.jp/ ※民芸品店、飲食店の営業時間・定休日は店舗により異なり、また季節によっても変動します。 |
地図 | 43.43364493907632 |