夭折の道産子画家・三岸好太郎ワールドとは
『生きた。描いた。愛した。』――三岸好太郎美術館のキャッチコピーは、何とも情熱的!
これは、三岸作品を読み解くキーワードとも言えるのです。
提供写真:三岸好太郎美術館
20歳で画壇デビューし、日本の近代洋画史で存在感を放った三岸。その特徴は、わずか10年の間に作風がどんどん変化したこと。たとえば、人物画や風景画から、道化のモチーフへ。さらには抽象画、晩年には蝶や貝が登場する幻想的な光景に取り組みました。
「作品から伝わる自由な気風は、札幌の風土を象徴しています」と、福地大輔学芸員。その魅力を体感できるおすすめの鑑賞ポイントは、意外にも、螺旋階段の中央だそう。
理由は、1・2階の作品が同時に見渡せるから。「同じ人物が描いたとは思えない作品の多彩さを体感してください」。自由に、奔放に。時代を駆け抜けた若き才能から、冒頭の言葉の意味を感じ取ってみてはいかがでしょうか。
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この美術館は、1967年に誕生。そもそものきっかけは、妻で画家の節子さんが「好太郎の作品は札幌にあるのがふさわしい」と、作品220点を寄贈したこと。東京国立近代美術館をはじめ、全国各地に三岸の作品はありますが、故郷・札幌で鑑賞できる喜びは格別といえます。
提供写真:三岸好太郎美術館
時間が許せば、無料のボランティア解説を利用するのがおすすめです。祝日や催しのある日を除き、毎日午後1~3時にいつでも受付OK。展示作品や三岸の人生について、分かりやすく学べます。基本は30分ですが、都合に合わせて変更できるので、気軽に申し込んでみましょう。展示入れ替えは年に5回行っており、さまざまな角度から三岸作品の魅力を紹介しています。
子供に人気! おばけのマールと館内探検
興味はあるけれど、子供が一緒だと行きにくいかも…。と思った方、ご安心ください。実はこの美術館は、子供にも人気! そのワケは、この絵本。
札幌発の「おばけのマール」です。これは、札幌の円山地区に住むおばけ・マールが、札幌のあちこちを訪ね、冒険を繰り広げるシリーズ。この美術館も、舞台のひとつとなりました。
ということで、夏&冬休み期間中は、なんと館内にマールが出現!
一緒に館内を探検しながら、作品に親しむ催しが開かれています。もちろん、絵本や絵葉書など、関連グッズも販売。気に入ったら、ほかの作品に登場する場所に足を運んでも面白いですね。
また、2階には工作コーナーが常設されており、三岸作品に関連したぬり絵などで遊べます。美術館ならではの遊び心で、お子さんも楽しいひとときを過ごせることでしょう。
庭園や野外彫刻…自然に溶け込むアート探訪も
春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色…。札幌らしい四季の美しさを味わえるのも、三岸好太郎美術館の良さ。なぜなら、約5.2ヘクタールという広大な北海道知事公館の敷地内の一角に位置し、青々とした芝生や豊かな木々に囲まれているのです。
提供写真:カフェきねずみ
敷地内には、美唄出身の安田侃(やすだかん)作の「意心帰」、流政之作の「サキモリ2000」などの彫刻作品が点在。また、国の登録有形文化財に指定されている北海道知事公館の建築美も、一見の価値ありです。
道路を挟んで隣接する道立近代美術館も含め、散策コース「アートフル・ガーデン」が整備されています。
道立近代美術館「近美コレクション」との共通観覧券(一般820円など)もあるので、お得なアートめぐりも楽しめます。
喫茶「きねずみ」で、可愛いエゾリスに会えるかも?
「全国の公立美術館のカフェの中でもとくにユニークなお店だと思います」と福地学芸員が胸を張るのが、館内入口そばにある「カフェきねずみ」。
提供写真:カフェきねずみ
落ち着いた雰囲気の店内では、札幌の人気パン屋「モンクール」の自家製酵母パンをはじめ、手作り菓子や100&果汁のジュース(各500円)、山中牧場の牛乳(300円)などが味わえます。安心&安全な地元の味覚にこだわったメニューに加え、人気の秘密は、「エゾリス」を意味する店名にあり。
提供写真:フォトリーナ®
そう、野生のエゾリスがひょっこり顔を出すのです。北海道にしか生息しないキュートな姿に、旅の疲れも癒されるはず。「雪原が広がる冬は特に見つけやすいですよ」と森みちこ店長。
喫茶店だけの利用もOK。移動の合間に、旅の小休止に、ぜひ足を運んでみましょう。