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観光観光

2016.05.18

小説『氷点』の舞台に建つ
三浦綾子記念文学館

writer : 石田 美恵

JR旭川駅の横、忠別(ちゅうべつ)川にかかる「氷点橋」を渡ってまっすぐ15分ほど歩くと、高い木々がそびえる「外国樹種見本林」につきあたります。その森の入口付近に建つのが、海外からの観光客も多く訪れる「三浦綾子記念文学館」。
三浦綾子記念文学館
代表作の小説『氷点』
この文学館は、旭川生まれの作家・三浦綾子の功績をたたえ、国内外に広く知らせることを願って、全国からの寄付によりつくられました。館内には、三浦文学の真髄とその生涯を伝える膨大な資料を展示。
代表作の小説『氷点』は、何度も映画やドラマとなり、発表から50年以上たったいまも多くのファンに愛されています。

作品を読んだことがある方はもちろん、読んでいない方も、豊かな緑に囲まれて、ゆったりくつろげる空間です。

三浦文学にひたりきる

小説『氷点』が書かれたのは1963年、三浦綾子が41歳のときでした。賞金一千万円の懸賞小説に応募するため、当時、小さな商店をきりもりしていた三浦綾子は、時間をやりくりして執筆にはげみ、みごと入選。翌年から新聞に連載され、大人気となりました。
小説『氷点』の原稿
文学館に多くの展示物
小説の舞台は、三浦綾子が子どものころから親しんでいた外国樹種見本林。文学館は自筆の原稿や写真、取材ノートなどの資料を多数展示し、その力強い仕事ぶりを伝えています。
14カ国語に翻訳された氷点
その後、『氷点』は英語、フランス語、ドイツ語、中国語など14カ国語に翻訳されました。また、三浦綾子は35年間で、小説、自伝、エッセイ、短歌、日記など多岐にわたるジャンルで80を超える作品を発表。展示室にはその作品がズラリと並んでいます。

夫・光世さんとの深い愛情

文学館では、ボランティアの方々がやっている「三浦文学案内人」の予約をすると、くわしく説明してもらえます。説明を聞くと理解が深まり、充実した時間が過ごせます。とくに、三浦綾子の生涯は波瀾万丈で、まるで小説の世界のように引き込まれます。
三浦光世と結婚した三浦綾子
結核の闘病中にキリスト教の洗礼を受けた三浦綾子は、同じくクリスチャンの三浦光世と結婚。『塩狩峠』執筆のころから、手の痛みで字がかけなくなった綾子のかわりに、夫・光世が口述筆記するなど、その執筆活動を献身的に支えました。
夫への感謝の言葉
三浦綾子は新しい本が出版されるたび、夫への感謝の言葉を記して贈っていたそうです。
文学館事務局長の難波真実さんと三浦夫妻
写真は、文学館事務局長の難波真実さんと三浦夫妻。難波さんいわく「綾子さんの人生は、連続テレビ小説にしたいくらいドラマチックです」とのこと。

六角形のモチーフは?

文学館の建物は、雪の結晶をイメージした六角形のデザインです。中央が吹き抜けになり、天井と床を見ると形がよくわかります。
雪の結晶をイメージした六角形のデザイン
雪の結晶のデザインの床
記念館のロゴマークにも六角形のモチーフが。こちらは見本林の樹木を真上から見た形をイメージしています。ショップには、たくさんの書籍のほか、びんせんや原稿用紙などのオリジナルグッズも販売しています。
販売されているオリジナルグッズ
ステンドグラス
階段の窓にも、六角形をデザインしたステンドグラスがはめ込まれています。窓枠の形は大きな十字架のようです。

ティールームには元気なエゾリスも

文学館の一角には、かわいい喫茶室もあります。窓の外はすっくと伸びた針葉樹。季節ごとに美しい景色を見せてくれます。
かわいい喫茶室
針葉樹

提供写真:三浦綾子記念文学館

旭川銘菓セット
人気メニューは、コーヒーか紅茶に地元のお菓子がついた「旭川銘菓セット」(400円)。なつかしいカステラでほっと一息ついていると、元気なエゾリスが姿を見せることも。
エゾリス
住宅地のすぐ近くにありながら、自然いっぱいの文学館は、三浦文学を貫く「人はいかに生きるべきか」というテーマにふれながら、おだやかな時間を過ごせる場所です。旭川観光の際に、ちょっとだけ足を伸ばしてみませんか。

スマートポイント

  • 公式サイトから事前に予約をすると、ボランティアの方に館内の説明をしてもらえます。個人でもグループでもOK、所要時間は約20分、料金は無料です(文学館への入館料金のみ)。
  • 文学館では年3回、オリジナル企画展が行われています。毎回さまざまな内容が工夫されているので、観光の際に何度訪ねても新しい発見があります。
  • 小説『塩狩峠』の雑誌掲載から、ちょうど50年にあたる2016年は、記念イベントがいろいろ開催されます。小説の舞台を歩くフットパスもスタート。くわしくは、公式サイトでご確認ください。

ライターのおすすめ

文学館を見学したあとは、外国樹種見本林の散策もお忘れなく。『氷点』に出てくるストローブマツの林や、春は桜が美しい美瑛川の堤防をゆっくり歩くと、小説の登場人物のような気分になれますよ!

石田 美恵

札幌出身。料理本編集者として東京の出版社に勤めたのち札幌にUターン。海藻と羊肉、鮭、お寿司が好きです。

INFORMATION最新情報は、各施設の公式ウェブサイト等でご確認ください。

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