かつて北海道日本海側にはニシンの大群が押し寄せ、明治後期から大正時代にかけて、これをもとに巨万の富を得た「ニシン長者」が誕生しました。
山形県から小さな舟を漕いで小樽にたどり着いた青山留吉もその一人。一代にして成功し、財を成して網元となった青山家では、二代目当主政吉・三代目当主政恵によってこのニシン御殿が建造されました。
1971(大正6)年から6年半の歳月をかけ、総工費はいまの価格で約30億円。壮麗豪華な建物と貴重な美術品が見学できます。また、桜やツツジ、アジサイ、ユリなど四季折々の花が彩る庭園も見どころの一つ。とくに毎年5月下旬~7月上旬に開かれる「牡丹・芍薬(ぼたん・しゃくやく)まつり」には遠方からも多くの観光客が訪れます。
観光
2016.09.17
贅を尽くした大豪邸と美術品
にしん御殿小樽貴賓館に感嘆
writer : 石渡裕美
金に糸目を付けずに建てた、日本海を見下ろすニシン御殿
JR小樽駅からおたる水族館方面に向かって車で約10分、日本海を見下ろす小高い丘に建つ「にしん御殿小樽貴賓館(旧青山別邸)」。青山家初代当主である青山留吉は山形県の出身。小さな木の船で単身、小樽・祝津港にたどり着き一代で身を興して網元にまで上り詰めました。
この旧青山別邸を建てたのは二代目当主・政吉と、その息女で三代目当主となった政恵。とくに政恵は美意識が高く、17歳という若さでこれだけの美術品を選定したというから、その才覚がうかがい知れます。
建物のなかでは、柱や床の木材の重厚な美しさにも目を奪われます。そのほとんどはヒノキやケヤキ、スギなど北海道には自生しない樹木で、北前船によって、このニシン御殿の主・青山家の出身地である山形県から運ばれたものです。この建物がどれだけ費用を気にせず贅沢に建てられたものであるかが想像できますね。
豪華な調度や美術品のほか、細部にわたるこだわりも魅力
見学にあたっては、見どころを熟知したガイドによる説明を受けるのがお薦めです。当時日本で名を馳せていた著名な画家や書家の作品もさることながら…。
普通なら見落としてしまいがちな、窓の外に施された丁寧な細工、まったく別の木であるにもかかわらず木目をつなげて配した床材、有田焼の便器や足置きなど、細部にまでわたるこだわりが随所に施され、見どころは尽きません。
桜にボタン、アジサイほか、四季折々の花が彩る庭園も見事!
四季折々に美しい表情を見せる庭も見どころの一つ。春の桜にはじまって、ツツジ、アジサイ、ユリなど季節の花々が訪れる人の心を和ませてくれ、とくに「牡丹・芍薬まつり」は多くの人たちが毎年楽しみに訪れるイベントとなっています。
旧青山別邸は「国 登録有形文化財」となっている歴史的建造物ですが、この登録はニシン御殿である「家屋」のほか、庭園内にある「文庫蔵」(内部非公開)、敷地を囲む「板塀」の三つを合わせてのものとなっています。
この建物が「別邸」であるのに対し、本邸があるのは青山家の故郷・山形県遊佐町。そちらも「旧青山本邸」として一般公開されています。また、青山家で働くニシン漁師(ヤン衆)が寝起きした番屋は「北海道開拓の村」(札幌市厚別区)内の「旧青山家漁家住宅」として移設・公開されていますので、ぜひ訪れてみて!
ニシン料理や甘味が味わえる食事処も人気のスポット
見学後は、渡り廊下でつながった別棟の小樽貴賓館も訪ねてみましょう。138枚の花の絵が飾られたエントランス天上が見応え十分なほか、オリジナル土産も並ぶ売店、大きなガラス窓から庭園が望めるレストラン「花かずら」もあります。
花かずらのお薦めは小樽産ニシンを使ったオリジナル料理で、写真は「にしん棒寿司そばセット」(1,404円)。脂がのったニシンに酢の爽やかな酸味が心地よい棒寿司と、カツオだしが効いてツルリと喉ごしのよいそばが好相性。大釜で炊き上げた身欠きニシン甘露煮がのった「にしんそば」(1,080円)や「お抹茶と和菓子セット」(756円)も人気です。
にしん御殿小樽貴賓館へは、JR小樽駅から「おたる水族館」行きの路線バスでも行けるほか、小樽港第3埠頭発から祝津港まで海上観光船を利用するのもお薦めです。歴史的建造物に美術品、庭園、料理までが楽しめる、魅力いっぱいのスポットをぜひ訪れてみてください!
スマートポイント
- 前日までの予約により無料のガイドツアーをお願いできます(「牡丹・芍薬まつり」期間中は不可)。ガイドツアーなしの場合は、見どころを記載した案内をもらい、それを見ながらまわるとより深く楽しめます。
- 「牡丹・芍薬まつり」は例年5月下旬~7月上旬。会期中には太鼓、茶席などのイベントもあり、開花情報専用ダイヤルも開設されます。まつり期間中は着物で来館すると入館料が無料になりますよ!
- 入館料の割引券は、JR小樽駅観光案内所、小樽市観光物産プラザ(運河プラザ)、浅草橋観光案内所(小樽運河)、オーセントホテル小樽、道の駅スペース・アップルよいちなどで入手できます。
ライターのおすすめ
ついつい目の前の美術品に目が行きがちですが、天井や床、窓の外の飾りなど、上下左右の細かい所まで観察してみて! 「こんなところにまでこんなこだわりが…」と、思わず唸ってしまう仕掛けが無数にあります。
石渡裕美
東京下町から札幌に移住して早20年。北海道LOVE、特に日高・十勝・函館が大好きです。
INFORMATION
スポット名 | にしん御殿小樽貴賓館(旧青山別邸) |
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住所 | 北海道小樽市祝津3丁目63 |
ジャンル | 観光 |
電話番号 | 0134-24-0024 |
料金 | 旧青山別邸入館料 大人1,080円・小学生540円 |
営業時間 | 4~12月は午前9時~午後5時、1~3月は午前9時~午後4時 |
定休日 | 年末年始 |
駐車場 | あり |
備考 | HP:http://www.otaru-kihinkan.jp/ |
地図 | 43.23173027665972 |
スポット名 | 和風レストラン 花かずら |
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住所 | 北海道小樽市祝津3丁目63(にしん御殿小樽貴賓館内) |
ジャンル | グルメ |
電話番号 | 0134-24-0024(にしん御殿小樽貴賓館) |
料金 | 1,000円前後 |
営業時間 | 4~12月は午前11時~午後5時、1~3月は午前11時~午後4時 |
定休日 | 年末年始 |
駐車場 | あり |
備考 | HP:http://www.otaru-kihinkan.jp/ レストランのみ利用の場合、旧青山別邸入館料は不要。 |
地図 | 43.23172245974282 |