旧商家丸一本間家は、増毛(ましけ)町のメインストリートに面して立つ重厚感のある大きなお屋敷です。これは、明治時代に北海道北部・天塩国で随一の豪商と呼ばれた本間泰蔵が建てたもの。店舗と蔵、居宅などが一体になった大きな建物は、床の延べ面積がおよそ1,300㎡もあり、とくに居宅部分は贅を尽くした造りになっています。国の重要文化財にも指定されている貴重な建物を味わいながら、町の歴史も学べる施設です。
道北一の豪商・本間泰蔵
札幌から北へ約100㎞、道北の日本海側にある増毛町は、明治初期に開拓精神を持った人々が本州から海を越えてやってきた港町の一つでした。旧商家丸一本間家を建てた本間泰蔵もその一人。佐渡出身の泰造は、小樽で丁稚奉公をしたあと1875(明治8)年に増毛に移住し、日用雑貨の店をはじめました。ニシン漁で町が栄えるのとともに、呉服店や海運業など事業を拡大して、一代で大豪商に。泰蔵がおこした酒造業は、いまも国稀酒造として続いています。
建物の随所に生きる宮大工の技
本間泰蔵は、1880(明治13)年から店舗や社屋、居宅など増築を重ね、20年以上もの年月をかけて、1902(明治35)年に本間家の建物を完成させました。建築にあたったのは、泰蔵がわざわざ故郷の新潟県から呼び寄せた宮大工たち。その高度な技術をいかした繊細で美しい細工が、建物のあちこちに見られます。建物だけでなく、襖絵や掛け軸などの装飾品も堂々として目を見張るものばかり。どこを見ても、泰蔵の美意識の高さが伝わってきます。
建物から感じるいにしえの増毛
建物に入ってまず驚かされるのが、呉服店のスペースの広さです。間口はおよそ10m。この広々とした店に多くの人が訪れ、にぎわったそう。それだけニシン漁による好景気の波が大きく、町も活気に満ちていたことが伝わってきます。また、茶の間の大きな囲炉裏や復元されたかまどなどからは、明治・大正期の暮らしぶりも垣間見えます。贅を尽くした客間や、海を見渡せる2階3階の部屋に入って、かつての豪商の生活を体感しよう。
※こちらは、公開日が2016年12月21日の記事となります。更新日は、ページ上部にてご確認いただけます。