奈良を代表する大寺院、東大寺と興福寺の間にある名勝依水園は、江戸前期に作られた「前園」と明治期に築かれた「後園」という、時代の異なる2つの池泉回遊式庭園で成されています。敷地内には寧楽美術館が併設されており、東アジアの古美術品を収蔵、展示しています。
関西おもしろ情報
2017.07.10
外国人観光客から絶大な人気
奈良を代表する庭園・依水園
writer : 磯本歌見
周りから隔絶された空間である「前園」
庭園入口のすぐ右手に広がる庭園が「前園」です。武士の裃などに用いられ、江戸時代抜群のブランド力があった高級麻織物「奈良晒(ならざらし)」。それを扱う将軍家御用達商人であった清須美道清(きよすみどうせい)が、江戸前期に、若草山、御蓋山、高円山の三山が見える場所に「三秀亭」という茅葺屋根の別邸を建て庭園を造ったのがはじまりです。こちらある茶室で、東大寺を参拝する大名方をもてなしていたそうです。池の中ほどに鶴亀をなぞらえた中島を2つ築き、池の要所には燈籠を配しています。護岸の石組みなどに江戸時代の庭園の特徴が残されています。
周りの風景を景観として取り入れた借景庭園の「後園」
では「後園」に行ってみましょう。明治時代に、呉服商でならまち7人衆の一人と言われた実業家、関藤次郎が茶の湯と詩歌の会を楽しむために作った築山式の池泉回遊式庭園で、前園も含め「依水園」と名付けました。若草山や御蓋山、東大寺南大門まで借景とした美しい庭園です。池に沿って散策し、氷心亭、寄付、水車小屋、柳生堂などで立ち止まると様々な風景を楽しめます。
水に沿って回れる庭園
「依水園」は6mという高低差をいかしながら、水を下へ下へと流す形で造園されています。築山の奥には小さな滝があり、園内で一番大きな音が聞こえます。築山の向こう側と手前側でも音が違い、池に沿って、場所ごとに水の音を楽しみながら歩くのも一興です。園内には約150種類の植物が植えられ、春は紅梅、ソメイヨシノ、ヒラドツツジ、夏はスイレン、サツキ、菖蒲、カキツバタ、秋はドウダンツツジやイロハモミジの紅葉など四季の彩を楽しむことができます。特に秋のドウダンツツジの紅葉の美しさは格別で、真っ赤に染まる美しさに心を奪われます。また新緑のころの若葉の美しさにも定評があります。
寧楽美術館も併設
併設の「寧楽美術館」は、関家から依水園を買い受けた実業家、中村凖策が収集した美術品を展示する美術館です。収蔵品は、古代中国の青銅器や拓本、古印、古鏡をはじめ、高麗・朝鮮時代の陶磁器、日本の茶道具など、多岐にわたっています。春と秋にテーマを変えて企画展を開催しています。
外国人から人気の庭園
奈良に回遊式の庭園が少ないこともあり、外国人から超人気です。1年に60カ国以上の国から外国人観光客が訪れます。また入場者の半数以上が外国人というのにも驚かされます。 依水園の魅力は、作られた美というより、作られているのにも関わらずいかにも自然らしくしているところ、きちんと計算されて作られているのに、それを感じさせないところです。気に入った本を持ってきて、お気に入りの場所で一日過ごす方もいるそうです。
スマートポイント
- 6月1日の開園記念日には、入園料(900円)がワンコインの500円になる。
- 後園を楽しむなら午後。東側なので西日が傾いてからの自然のライトアップがきれい。午後3時くらいからがおすすめ。
- 夏は三秀亭前の池にスイレンが咲くので、午前中がきれい。
ライターのおすすめ
角を曲がるたびに違った風景が広がるので、いろいろな美しさを楽しめます。また水の音の違いを聞き分けながら散策するのも風流です。季節ごとに来たくなりました。
磯本歌見
関西最西端・忠臣蔵の故郷「赤穂」に住みながら、フットワークの軽さを活かして京阪神・奈良まで取材へ。仏像ガールでご朱印女子。
INFORMATION
スポット名 | 名勝 依水園・寧楽美術館 |
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住所 | 奈良県奈良市水門町74 |
ジャンル | 観光 |
電話番号 | 0742-25-0781 |
料金 | 入園料(美術館の入館含む)900円 |
営業時間 | 午前9時30分~午後4時30分(入園は午後4時まで) |
定休日 | 火曜日(祝日の場合は開園、翌日休。4・5・10・11月は無休) |
駐車場 | なし |
備考 | HP : http://www.isuien.or.jp/ |