江戸時代、天下の台所といわれるほどの賑わいをみせた大坂(大阪)。残念ながら往時をしのぶ町並みは残っていない。しかし、天神橋筋商店街にあるビルの中に、大阪の原風景ともいえるノスタルジックな町並みが再現されている。
連日多くの観光客が訪れ、多い日には約3000人が来館。年間では50万人に迫る勢いだ。そのおよそ半数は外国人観光客という驚きのスポット。
キャッチフレーズは「ほっとしたいそこの人、しばし時を忘れて、浪花見物に参りましょう」。
親子はもちろん3世代で楽しめる大阪市立住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」にタイムスリップしよう。
観光
2016.03.13
親子はもちろん3世代で楽しい
大阪くらしの今昔館で浪花見物
writer : 塚本隆司
ビルの中に浪花の町
「住まいの歴史と文化」をテーマに開館した大阪市立住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」。住まい情報センタービルの8・9・10階にある。
館内は大きく2つに分かれている。
1つは、9階に再現された江戸時代の大坂の町並み。専門家らによる学術的考証に基づき、当時の資材や建築技術を使い実物大で再現されている。10階は、町並みが展望できるフロア。まずは、江戸時代の庶民が暮らす大坂の町を見下ろすところか始まり、大通りへと足を踏み入れるのだ。この町の1日は45分。館内の照明など、工夫を凝らした演出で時間の経過を体験させてくれる。
8階では、明治・大正・昭和の大阪を模型と資料を使った展示だ。住まい移り変わりを忠実に見せてくれるので、懐かしく感じる人や今では想像できない時代を知る人など、様々な思いが交錯することだろう。
再現町家を着物で散策
まずは9階。実物大のなにわ町家が並ぶ大通りにタイムスリップ。
着物姿で歩く人たちが、一層江戸時代の雰囲気を醸し出している。これが外国人に大人気の着物体験だ。
着物(夏期は浴衣)に着替えて9階フロア内を散策できるサービスで、1回30分で300円。洋服の上から羽織るだけの簡単な着付けだが、1日限定300人ということもあり、多い時には開館前に200人もの行列ができるとか。朝に予約をとって大阪観光を楽しむ人もいるそうだ。
町歩きは、まず風呂屋から。中では、江戸時代の暮らしについての説明が上映される。日本語・英語・韓国語・中国語の字幕付き。上映時間は約20分。画は日本画家の山口晃さんで、語りは落語家の桂米朝さんだ。
親子でも、三世代でも、楽しい演出の数々
大通りに面した店には、様々な商品が並べられている。これらも全て学術的考証に基づく品ばかり。
町家の中へ上がることもできる。薬屋や唐物屋、裏通り入れば長屋などが
ある。それぞれに家具から調度品や小物まで全て本物そのもの。生活を感じるくらいに自然に置かれ、自由に手に取ることもできる。
お釜のふたを手にとってみよう。その重さに驚くはずだ。こんな体験がいたるところでできる。
「ああ。こんなんやったわ」と懐かしむ人。「ナニこれ〜」と、はしゃぐ子どもたち。親子や三世代で楽しめる。
懐かしいだけではない。実は、子どもたちには別の楽しみ方もある。
屋根の上に猫、路地裏の犬など、ところどころにいる動物たちを探すのだ。見つけやすいスズメやニワトリ、ネズミやトンボなど簡単には見つけられないものも。何がいるかはスタッフに訊ねてみるとよい。
明治から昭和のミニチュア模型も史実どおりに
8階では、ミニチュア版で大阪の代表的な住まいと暮らしの移り変わりを再現している。明治から大正・昭和を舞台とした人気ドラマの世界へと引き込まれるようだ。
「住まいの歴史と文化」のテーマ館だけあり、ミニチュアといえど念密な学術的考証を重ねて製作されている。ところどころで、自転車でこけている人がいるなど遊び心もあって楽しい。ついつい時間を忘れて見入ってしまう。
昭和初期から戦後を生きた一人の女性の物語を八千草薫さんの上品な大阪言葉で見せてくれる展示も見逃せない。話の流れに合わせて町並みの模型が入れ替わるなど、一見の価値あり。「テレビが来た日」など、ご年配の人にとっては、遠い記憶を呼び覚ましてくれるフロアだろう。
近代化が進み、「大坂の町」が「大阪の街」へと変わっていく様子がよくわかる。
場所は天神橋筋商店街「天六」、観覧料がお得なサービスも
大阪くらしの今昔館が人気の理由は、観覧料が600円(一般)と、お手頃なこともあるだろう。さらに、大阪観光局が発行する市営地下鉄やバス、私鉄などが1日乗り放題となる「スルッとKANSAI 大阪周遊パス」があれば無料になるのだ。他にも大阪市交通局の「エンジョイエコカード」など、割引になるカードもある。
場所は、「天六(てんろく)」と呼ばれる天神橋筋六丁目商店街交差点
の角。地下鉄谷町線・堺筋線、阪急線「天神橋筋六丁目」駅下車すぐと、わかりやすい。
着物の予約後待ち時間があるなら、日本一長いといわれる天神橋筋商店街をブラブラしてみるのがいいだろう。テレビでもよく登場する商店街だ。大阪らしいグルメ店が多いので楽しめるはずだ。
スマートポイント
- 来館者の半分が外国人。お目当ては着物体験。羽織るだけの簡単ものだから手軽に着られるのも外国人に好まれる理由かも。それにしても……着物がよく似合う外国人が多いことに驚きだ。
- 時代劇が好きな人にとっては半日くらい余裕で過ごせそう。空いている時間帯は16時以降。閉館まで時間がないが、年間パスポート(2000円)を買って、何度も訪れる方法もある。
- 併設のミュージアムショップでは、昔懐かしの玩具やお菓子を販売。一番人気は和風ミニチュア模型。展示を見た後だけに欲しくなるのも納得だ。他にも、大阪の歴史に関する書籍がある。
ライターのおすすめ
とにかく本格的な再現に驚き。しかも、展示だけではなく手にとったりできるのも嬉しい。撮影も自由にできるので、町の人になりきっていっぱい写真を撮ろう。懐かしさの中で新たな発見ができる場所です。
塚本隆司
ご覧頂きありがとうございます。
「行きたい」気持ちが「行こう」に変わった瞬間が今ならうれしいです。
INFORMATION
スポット名 | 大阪市立住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」 |
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住所 | 大阪府大阪市北区天神橋6丁目4-20 住まい情報センタービル8階 |
電話番号 | 06-6242-1170 |
料金 | 一般600円 高校生・大学生300円 中学生以下、障害者手帳持参者、市内在住の65 歳以上の人は無料 (証明書要提示) 企画展観覧料は別料金 |
営業時間 | 10時~17時(入館は16時30分まで) |
定休日 | 火曜日(祝日の場合は翌日) 祝日の翌日(日曜日、月曜日の場合を除く) 第3月曜日(祝日、振替休日の場合はその週の水曜日) 年末年始12/29~1/2 ※上記のほか臨時開館・休館あり |
備考 | HP : http://konjyakukan.com/index.html |