1637年、徳川三代将軍家光の時代に、大倉治右衛門が京都の伏見に開いた「笠置屋」。起こりは小さな酒屋でしたが、時を経て、「月桂冠」という世界中で愛される日本酒ブランドを掲げる一流の酒造メーカーとなりました。
月桂冠大倉記念館は、月桂冠はもちろん、伏見の酒造りの歴史を知ることができる企業博物館。様々な展示品から人々の生活や時代背景が垣間見え、いろんな角度で楽しむことができます。
観光
2019.11.29
奥深い伏見の酒造り
月桂冠大倉記念館で歴史を探訪
writer : 山本宴子
100年前の酒蔵が体感できる場所
白壁と杉の焼板とのコントラストが美しい、100年前の酒蔵に囲まれた中庭。かつてはここに道具を並べて、日光消毒を行っていたそうです。奥に見えるのは「会場所」という、杜氏制度で出稼ぎに来ていた職人たちが宿舎として暮らしていた建物です。
薪や重油を燃料として、甑(こしき)で米を蒸していたいた名残の煙突。中庭の中央に立って空を見上げると、360度、どこにも電線がないことに気づきます。細部にわたって、約100年の酒蔵がそのまま残されているのですね。
お酒の仕込水に使用されている「さかみづ」は、お猪口で自由に試飲OK。地下約50メートルから湧き出る井戸水が、きめ細かくまろやかな酒質の源となっています。
往時の職人たちの技を知る!
江戸時代の酒造りを描いたパネルとともに、工程にあわせて約400点の用具類が展示されています。伝統的な樽や桶は種類がいくつもあって、一つひとつ理にかなった形と細工がなされているんです。
大きな醪桶(もろみおけ)には梯子がかかっていました。さらに、動作を揃えたり、時間を計るために歌われたという「酒造りの唄」が流れ、気分が高まります!
時代の移り変わりと人々の生活
隣の展示室へ移動すると、盃洗台や特許を取得した大倉式猪口付き瓶、酒切手、ベーブルース来日時の小売店用看板など、その時代を反映した数々の展示物が。徳利を持って酒屋へ通った樽酒から、瓶詰酒への移り変わりをはじめ、時代の変化と月桂冠の歩みを知ることができます。
歴史を物語る貴重な酒瓶
戦時中、関東軍へ届けられていた日本酒の瓶。知識として知っていることも、実物を目の当たりにすると、やはり重みが違いますね…。
「MADE IN OCCUPIDE JAPAN」の文字が印刷された酒瓶。戦後、輸出する製品には「占領下日本製」と表示するよう義務付けられていたのです。
昭和初期の広告宣伝ポスター。女性の右側に銃を持った兵隊の置物、窓の向こうには戦闘機が描かれています。戦時中、「時代にふさわしくない」という理由でお蔵入りになった、画期的な女性の描き方をしたポスターも展示されていました。
お楽しみのきき酒は3種類!
見学の最後にロビーでいただけるきき酒。大阪万博の頃のお酒を再現した「レトロボトル 吟醸酒」、フルーティで高級感あふれる「玉の泉 大吟醸」、そしてほんのり甘くて飲みやすい「プラムワイン」とバラエティに富んだ3種類です。
そして、なんとミニボトルのお土産つき!未成年の方は絵はがきがもらえます。
※こちらは、公開日が2016年8月24日の記事となります。更新日は、ページ上部にてご確認いただけます。
スマートポイント
- 数少ない日本建築の酒蔵は、とても貴重な建築物。電線を地下に埋める徹底ぶりで、100年前の酒蔵をそのまま体感できる中庭には、かつての杜氏の宿舎も残されています。
- 江戸時代の酒造りの道具類から、明治・大正期の商品や広告、写真など貴重な資料が展示されており、見応え十分!
- 3種類のきき酒が楽しめます。ミニボトル(未成年の方には絵はがき)のお土産付き。
ライターのおすすめ
白壁土蔵の酒蔵が並ぶ風景で知られる伏見。月桂冠を軸に、伏見の酒造りとその歴史を知ることができ、想像以上の奥深さでした。館内にスタッフの方がいらっしゃると、お酒にまつわる小話やトリビアが聞けるかも!
山本宴子
京都出身・在住。ライター、編集者。歴史、旅行、本屋、パン屋、水族館が好き。ちっちゃなことで感動し、イルカに癒やされる。
INFORMATION
スポット名 | 月桂冠大倉記念館 |
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住所 | 京都市伏見区南浜町247番地 |
ジャンル | 観光 |
電話番号 | 075-623-2056 |
料金 | 大人400円、中学・高校生100円 |
営業時間 | 9時30分~16時30分(受付16時15分) |
定休日 | 8月13日~16日、年末年始 |
駐車場 | あり |
備考 | HP:http://www.gekkeikan.co.jp/index.html |