長い京都の歴史の中で、豊臣秀吉がいた時間は、ほんのわずかかもしれない。しかし、その足跡を今も伝えてくれる場所がある。
鴨川に架かる五条大橋と七条大橋の間に「正面橋」と呼ばれる橋がある。東西に延びる「正面通り」の東の先には、豊国(とよくに)神社の大きな鳥居。かつて旧方広寺大仏殿があった場所だ。大仏の正面に位置したことが、名前の由来になっている。京都に大仏があったのだ。「東山大仏」や「京の大仏つぁん」と都人に慕われた大仏。今は存在しないが、跡地には豊国神社があり、東の阿弥陀ヶ峰には、秀吉が眠る豊国廟(ほうこくびょう)がある。歴史に翻弄(ほんろう)された豊臣秀吉ゆかりのスポットを紹介しよう。
観光
2016.08.31
京都にも大仏があった!?
豊臣秀吉ゆかりの地をめぐる
writer : 塚本隆司
豊臣秀吉が眠る「豊国廟」
豊臣秀吉は、1598(慶長3)年8月18日に伏見城で62年の生涯を閉じた。死後、遺言により東山連峰の中でも秀峯と名高い阿弥陀ヶ峰中腹に埋葬され、廟所が設けられた。
山麓の太閤坦(たいこうだいら)には、壮麗にして壮大な豊国社を造営され、「正一位豊国大明神」の神号を与えられ祭られた。本殿の他に舞殿・神宝殿・護摩堂鐘楼・太鼓楼などの殿舎が建ち並んでいたという。
1615(元和元)年、豊臣家が滅亡すると、廟も社も破壊され風雨にさらされ荒れ果てるままとなる。豊国廟が再建されたのは、1898(明治31)年のことである。
京都国立博物館と三十三間堂の間を東には、豊国廟参道が太閤坦へと続いている。豊国廟へは、およそ500段の階段を上った先だ。往復30〜40分はかかると見ておくべきだろう。
京都にもあった大仏
豊臣秀吉は、1586(天正14)年、京都に大仏の造立を始める。1595(文禄14)年に、旧方広寺大仏殿が完成した。大仏は東大寺よりも大きかったという。大仏殿の広さは、東西約55m、南北約90m。現在の方広寺や豊国神社、京都国立博物館、蓮華王院(三十三間堂)が含まれる広大なものだ。大和大路通りの巨石の石垣、蓮華王院の太閤塀(重文)に、当時の面影を残す。
完成の翌年、慶長伏見地震で大仏が倒壊。豊臣秀頼の代に再建したが、火災に見舞われ焼失。ふたたび再建へとこぎ着けたが、開眼供養目前に「大坂の陣」のきっかけとなる「方広寺鐘名事件」が発生した。
徳川の世でも「京の大仏つぁん」として親しまれたが、1798(寛政10)年に落雷で焼失。以後再建されることはなかった。大仏殿跡地に豊国神社が建立されたのは明治のこと。神社東側の大仏殿跡緑地には、大仏の台座跡が残っている。
大仏殿跡地に建つ豊国神社
太閤坦にあった豊国社は、徳川家によって破却され、以後250年荒れ放題となる。1880(明治13)年、旧方広寺大仏殿跡に豊国神社として復興された。京都では「ほうこくさん」と親しまれている。
社殿前の唐門は、伏見城にあった遺構で桃山文化を代表する建築物だ。国宝に指定されている。創建当時は、金箔が施されていたという。「豊国大明神」と書かれた御神号額は、旧豊国社から伝わるものだ。
門前には、豊臣秀吉の馬印にちなんだ瓢箪型の絵馬を奉納できる。社務所で購入できるお守りも興味深い。出世開運の神・秀吉にあやかったお守りは、お土産にも喜ばれそうだ。
境内の宝物館には、「天下一」と刻まれた鉄灯籠(重文)や豊国社での祭礼の様子を描いた豊国祭礼図屏風(重文)など、豊臣秀吉ゆかりの品々が展示されている。
戦国時代の最後を締めくくるスポット。豊臣家の栄枯盛衰の地を歩いてみてはいかが。
スマートポイント
- 太閤坦へは、JR京都駅から国立京都女子大へと向かうバス・プリンセスラインの利用がオススメ。片道230円。豊国廟の階段は滑りやすいので、雨の日など特に注意が必要。
- 豊国神社で本殿への参拝ができるのは、通常正月1日〜3日の3日間のみ。ただし、事前に正式参拝を予約すれば可能。
- 豊国神社の隣の方広寺には「大坂の陣」のきっかけ、しいては豊臣家滅亡へとつながる「国家安康・君臣豊楽」の文字が刻まれた梵鐘が現存。教科書にも載っている有名なスポットだけに修学旅行生の姿をよく見かける。
ライターのおすすめ
死後、八幡大菩薩になろうとした秀吉が、西方浄土への思いを形にしようと整備したといわれる地。それを妨げた家康。戦国時代の最後のせめぎ合いを見て取れる地は、歴史ファンなら興味深い場所ですね。
塚本隆司
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「行きたい」気持ちが「行こう」に変わった瞬間が今ならうれしいです。
INFORMATION
スポット名 | 豊国神社 |
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住所 | 京都府京都市東山区大和大路正面茶屋町530 |
ジャンル | 観光 |
電話番号 | 075-561-3802 |
料金 | 宝物館:大人300円、大学・高校生200円、中学・小学生100円 |
営業時間 | 境内:自由 宝物館:9:00〜17:00(受付終了16:30) |
定休日 | 無休 |
駐車場 | あり、無料 |
スポット名 | 豊国廟 |
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住所 | 京都府京都市東山区今熊野北日吉町 |
電話番号 | 075-561-3802(豊国神社) |
料金 | 志納金100円 |
営業時間 | 8:30~17:00 |
定休日 | 無休 |
駐車場 | あり、500円 |