編集部から「沖縄を好きになった理由を記事として書いて欲しい」
と言われた時、
頭の中には「私は沖縄の何が好きなのか?」というフレーズがこだました。
コンクリートジャングル東京都新宿区の中でも、
雑踏から少し離れた四谷という土地で生まれ育った私が、
沖縄に出会ったのは高校の平和学習。
沖縄に行く前の事前学習として沖縄戦や基地問題を勉強するため、
灰色の写真から生まれる沖縄の第一印象は良い訳がない。
沖縄戦の焼け野原から国際通りの面影を感じるのは不可能に近いが、
事実ここまで復興してきた沖縄には何かしら理由があると感じた。
それは戦争の傷跡や今もなお残る基地問題がありながらも、
意気揚々と生活する地元の人達の姿や地域に根づく文化に繋がり、
私の沖縄に対する興味の源泉は止まらくなってしまう。
地域に対して一種の憧れに近い感覚を覚えながら、
沖縄国際大学に進学できたことで沖縄の生活がはじまった。
ある夏の日の夕方、何気なくニュース番組を眺めていると
「今日は宜野湾市の宜野湾区青年会をご紹介します」と
リポーターらしき人が青年からエイサーの踊りや見所について
インタビューをしていた。
それを見た時「地域の人と関わる手段はエイサーだ」と感じ、
エイサーに興じる青年たちを取り囲むお年寄りや子どもたちの姿を
思い浮かべた。ニュース番組に出ていた宜野湾区の公民館は
どこにあるのかも分からなかったが、
家の近所に長田区の公民館があることを思い出し、
数日後には決意を胸に公民館の門を叩いていた。
連日行われるエイサー練習と、練習後の宴を通じて先輩後輩方に
”地域のイロハ”を教えてもらった。
県外出身者ということでの疎外感は自らが作り出しているように
思えて止まず、
そんな私を受け入れてくれた青年会には本当に感謝している。
エイサーの本番である旧盆のミチジュネーは、一興の余地はあるものの、
思いふける間はなく激流のごとく終わってしまう。
それは踊り手だった頃から地謡になった今もあまり変わらず、
無理を承知で一度は見物してみたいものだと思う時がある。
長田区をはじめ、宜野湾市内の青年会活動では真心溢れる人達に恵まれ、
いつしか公民館の外でも地域のことに関わる機会が増え、
他地域の青年会と酒を酌み交わす時間も長くなっていった。
恵まれた自然環境がありながらもダイビングの経験はなく、
海の代わりにいつも公民館や地域の中に潜っており、
気付けばエイサーの本まで書いてしまう始末。
「沖縄を好きになった理由」といえど、移住して10年程度の若造ごとき、
まだまだ好きになっている途上であろう。
行事を終えた後の夕暮れの公民館、
何が目的でもなく集まり酒を交わす時間、
思い立てば十数分で海に行けるという立地、
共に泣き笑い合える月一回の模合、
作品数は少ないが安いレンタルビデオ店、
気を楽にして沖縄の空気で生活しながら、
私はこれからも沖縄を好きになっていく。
特集
2015.03.20
沖縄の中に憧れて
writer : 中本岩郎
中本岩郎
地域の青年会に所属し、エイサーを通し真心溢れる沖縄の人々の虜に。地域に根付く文化の深部を発信する。