「命は、無数の点の集まり」
その原画を目の前にして、思わずそうつぶやいた。
点描画、それは白いキャンバスの中に黒く密集した点。
彼は、細胞を描いている。
細胞がつながって凝縮されひしめき合い、
命というひとつの形になる。
白い世界に写し出された実体。
花であり人であり竜であるそれらが、
互いに絡まり優しく呼応し合っているのが感じられる。
大城清太。
神人の家系に産まれた彼は幼い頃よりいつも、
神人であるオバーから世界の意味をひとつひとつ教えてもらっていた。
それらの大切な言葉は彼の中に留まり、無数の点となって存在し続けた。
彼の天描画は、それが彼の心から表の世界へ広く遠く旅立つ為に出てきたものだ。
だから彼は絵を描くとは言わない。
点を打つ、と言う。
朝、寝起きの彼の心にぼんやりと念が浮かぶ。
念とは今の心と書く。
彼の今の心に写っている点の集合体の輪郭を
キャンバスにうっすらと描きはじめる。
そして、点を降ろしていく。
彼の心の中からひとつづつ点が消えていく。
心の中から外の世界へ、
実体は移動している。
彼の心から点が全て消え真っ白になった時、
キャンバスでは産まれたての命が柔らかに呼吸を始めている。