きっかけは、同じ時期に共通のビジョンを持っていた
APARTMENT OKINAWAのディレクター、伊是名淳(いぜな あつし)さんへお話をうかがったところ「沖縄で活動している、あるいは、沖縄のアイデンティティを持って制作しているブランドを集めて、沖縄発のファッションを見てほしいと常々思っていた」そう。
離島遠隔地である沖縄には、小規模生産者が多く、1社だけで国内や海外の市場へアピールするのは非常に難しい。小規模生産者が集まって、販路拡大や情報共有、販売の窓口が1本化できたら効果的なのではないか? とアパートメント沖縄の成り立ちについて語りつつ、「ほとんどのデザイナーが経営者でもあり実務者でもある。営業に力を入れることによって、生産や企画が止まってしまうのが悩みの種だった」と話す。
県外への販路開拓の現状・問題点を理解した上で、「今こそスタートさせなければ!」とホーセルの金江さんがいい出したことがきっかけだった。
ちょうどPaperJewelryが好調で同じような思いを抱えていた伊是名さん。これまでの経験で培った県内デザイナーとのネットワークがある伊是名さんが21ブランドのまとめ役となり、金江さんがビジネス面を担うということでプロジェクトがスタートした。
戦後、沖縄で洋装が発展した理由と現代ファッションへの影響
沖縄発のファッションとひと言でいっても、「沖縄でくくる時の"沖縄”ってなんですか?」との質問に、「いろいろな文化や人間をありのまま"受け入れる島”。そういう大らかさというか、背景があると、不思議なことにビジネスの中心である東京と比べても引けを取らないと思うんです。マイペースで独自のファッションが生まれやすいとでもいいましょうか。誰も人と違うことに対してとやかくいわないし、それが人目をひくことであっても"その人らしくていいさ(良いね)”で終わる(笑)。
夜遊びにいくと、一般人がまるでスターのような格好で闊歩していたり、ドアtoドアの車移動がからこその露出(笑)の高いゴージャスなドレスで輝けたり。沖縄には独特の着飾る文化があるよね」
戦後、アメリカに統治されていた時代の影響か、テーラーメイドの仕立て屋さんや洋裁店がいまだに多く、「インディペンデントレーベルで小回りがきいて、顧客のニーズやオーダーだけで成り立っている人たちもいる」というのが、伊是名さんが捉えた現代の沖縄ファッションの特徴だ。
APARTMENT OKINAWAの参加ブランドについて
今回、APRTMENT・OKINAWAの21ブランドは、伊是名さんと金江さんが自信を持って売れるものを選んでいて、最新の沖縄スタイルやトレンドを感じることができる。
エッジの効いたものから、沖縄らしさが際立ったカラフルなアイテムなど、目利きである2人と現場の声や顧客の反応を見て選んだもので、10代〜80代の男女という幅広い世代をターゲットに、ジャンルもさまざま。
作り手が自分らしく生きているか、やりたいことをやっているかというところも大切で、選んだ基準は今の自分達の「感覚」だという。
今後活動していくうえで、参加ブランドは増えていくだろうし、やはりある程度の量産ができるかという点で、中身が変化してくる可能性もある。
「それぞれの個性を潰さないようにアパートメント(集合体)として、お互いの個々の活動や実績を評価しながら刺激し合う環境を作りたい」そうだ。
沖縄のアパレル業界は、伝統工芸のように、いかに他と差別化できるかというスペシャリストと、観光やお土産などに特化しているところと二極化している。スペシャリストをまとめて、量にして攻める、これがAPARTMENT OKINAWAでもある。
今後のAPARTMENT OKINAWAの活動
2017年6月に、福岡県北九州市のデパート「コレット」、7月「横浜そごう」、8月「阪急うめだ」での展示販売会も予定されている。詳細はfacebookなどを中心に発信していくとのこと。
APARTMENT OKINAWAのロゴマークは、階段のように、一歩づつ確実にステップアップしながら,時には踊り場で休憩したり、その間に他のメンバーが頑張って盛り上げてくれたり、グループとしてともに成長しながら進んでいくイメージ。
APARTMENT OKINAWAの活動を通して、「参加ブランドからコラボレーションが生まれたり、お互いが知恵を出し合ったり、組織として成長していくことによって、お客さんも楽しみながら共感したり、参加してくれるようになったら最高です!」と伊是名さん。
今は、SNSを使って手軽に情報発信できるので、口コミで広まって話題になれば、遠く離れた人達とも共通の関心で繫がりやすい時代。APARTMENT OKINAWAでもイベントはじめsale情報など、さまざまな情報を発信していく予定なので、沖縄へ来る機会があれば、バイヤーだけでなく、一般の人も気軽にイベントに参加したり、各ブランドの店舗を訪れてみてはいかが?
沖縄発のユニークな最新ファッションを楽しんで!
APARTMENT OKINAWA参加ブランドリスト
最後に、伊是名さんが感じる各ブランドの魅力を紹介。
【アパレル】
Dreami
『1点づつハンドメイドで仕上げられたドレスやワンピース。女性らしい美しさやかわいらしさを時に大胆に時にさりげなく着る人の気持ちを後押しするデザインが人気』
HIGA
『洗練されたミニマルなデザインに琉球藍染を掛け合わせるなど、沖縄から見る自由な視点でモードを発信』
LEQUIOSIAN
『単色で大胆に配置されたデザインのシャツはユニセックスに着れるものも多く、それは琉球の時代、自由に世界を航海していた先代へのオマージュか』
monsieur monsieur
『型に捉われない服作りは肩の力を抜いて服作りをするデザイナーの姿勢とシンクロして、着るものの心も緩ませる』
中村洋装
『製作時間や独特なネーミングを配した商品タグにデザイナーの細部に渡る洋服への愛が感じられるブランド』
OKINAWA・TAILORED
『”沖縄の歴史年表的服”というテーマのもと極端にパッチワークされたシャツなどはコアな洋服好きを唸らせている』
PICTURES
『数種類の布地を立体的に構築した代表的な商品”バルーンスカート”はアパレルというよりは、もはやタイムレスなプロダクトデザイン』
REHEARSAL
『沖縄の持つネガティヴな側面をPOPなイラストやメッセージに置き換えて布地に転写。それを連続・増殖させることでポジティブな衣服へ転換させる異端のブランド』
Taion
『キャンバスに描かれた沖縄の植物を布地に転用することで色彩がファッションアイテムとして動き出す。沖縄発のテキスタイルブランド』
YOKANG
『伝統工芸である紅型の型染めをオリジナリティーある技法で大胆に染め上げ、さまざまな商品に落とし込んだ功績は沖縄ファッションの歴史で語り継がれる』
【アクセサリー】
Churaumi
『サンゴを主体にシンプルでモダンなデザインと沖縄を思い描かせるような素材使いが日々を丁寧に暮らす女性にマッチするアクセサリーブランド』
JEENAR
『沖縄の景色をホタルガラス・珊瑚・天然石に置き換え、一つひとつ手しごとで日常の暮らしに寄り添えるアクセサリーを丁寧に作り上げている』
JOIA DE LEQUIO
『琉球ガラスの吹きガラスという技法を使い伝統工芸を現代風にアレンジしたジュエリーブランドは、今までにないアプローチが魅力』
LANTANA JEWELRY
『沖縄を象徴する素材やモチーフを使用し、確かな技術と多様な技法で作られたアクセサリーは沖縄のMIXカルチャーを表している様でもある』
Paper Jewelry
『デザイナーが持つ金属アレルギーというコンプレックスが紙ならではの長所を取り入れた繊細で優美な新感覚アクセサリーへと昇華』
【グッズ】
HABERU
『沖縄の伝統的な織物に沖縄の海や空を連想させるホタルガラスで味付けした蝶ネクタイとブローチはお洒落を楽しみ、遊び心のある男性へ』
KOMINTERN
『昔はどこの家庭でも見られた古びた陶磁器へ新たなデザインを加える事で価値を見い出させようとする試みはデザインの待つ可能性への挑戦でもある』
Create a 5ac【PIPE】
『重くなりがちなエキゾチックレザーなどを個性的な色彩感覚で構成したバッグや財布などはPOP ARTを観ているようで楽しい気持ちにさせてくれる』
QUIET
『ターポリンというビニール系の生地とレザーを組み合わせたバッグは機能性が重視されたデザイン。自立するので使わない時でも存在感を放つ』
shimaai
『土壌からこだわり有機農法で育てた植物から抽出される染料で染め上げらたバッグやストールは石垣島の大らかな空気をも含んでいる』
SUI
『"気軽にカスタムオーダーの贅沢を提供する”をコンセプトに自分に合ったサイズの服を着る事の重要性を唱えるブランド。今後の展開は要注目』