なぜ今、ちんすこうなのか!? 2010年創業の「くがに菓子本店」の挑戦
この写真を見ると、看板上から「くがにちんすこう」、「くがに菓子本店」、暖簾には「くがにやあ」との文字。どれが社名でどれが店名なのか、まずはこの質問から話が始まりました。
・社名は「株式会社くがに菓子本店」
・商品名は「くがにちんすこう」
・店名は「くがにやあ」
このように区別します。ちんすこうといえば、県内には老舗店が多く「なぜ今さら、ちんすこうなのか?」とうかがってみました。
現社長の父が60歳を機に始めた「くがに菓子本店」。
社長が甘いお菓子が大好きだったため、ならば自らお菓子を製造してしまおう!と調理師免許を持つ長男の大陸(だいろく)さんに相談し、始めたのが「くがに菓子本店」です。
開業当時は誰にも相手にされず、そこで知り合いに食べてもらったところ「えっ。おいしいじゃないか」と太鼓判をもらい、その後少しずつ口コミで広がり始め、じりじりとピーターが増えていきました。
現在は、調理師だった長男・大陸さんが工場長を務めて製菓と梱包の指揮を取り、次女・鈴香さんが総務や経理を担当。写真家の三女・尚香さんが商品撮影をして、紅型作家の四女・優香さんがチラシやパッケージのデザインをしているとか。そして店の経営まで手伝う新垣家の兄妹達。
あとはマーケターなる広報PR担当がいればひと通りのビジネス展開の未来予想図が完成しそうです。
す、素晴らしい!なんという連携プレイなんだ…。
そんなクリエイティブな新垣家の兄妹。先見の目を持っていた現社長には、妖怪メダルを1枚あげたいところです。
パッケージデザインを手がける四女!紅型職人の「新垣優香」とは!?
店内のあちこちに飾られた紅型は、1985年生まれの四女・新垣優香さんの作品です。紅型とは、沖縄の伝統工芸の染物のこと。
県内高校の染織デザイン科を卒業後、首里流染、玉那覇紅型工房などを経て2009年紅型作家としてデビューした優香さん。
その後、「琉球銀行主催の紅型コンテスト」で2年連続大賞を受賞し、県内最大級の美術展覧会「沖展」に2回入賞。日展での入選や日本新工芸展では3回入選。2013年からは東京で個展を開くなど県内外で幅広く活動している紅型作家です。
優香さんの作品は、鮮やかな色合いとオリジナル性溢れる大胆な絵柄が多く、古典柄の基礎を活かして現代を象徴する独創的なエッジが効いたものばかり。
そして2016年度、中学生の美術の教科書に優香さんの作品が掲載、しかも全国版だとか。これはスゴいことになりそうです。2016年は、くがに菓子店に旋風が巻き起こるかもしれません。
「くがにちんすこう」のパッケージがアートだった
そんな優香さんのパッケージデザインがこちら。商品との融合性を考えて姉妹会議を重ねながらイラスト化したパッケージの箱は、全て優香さんが手がけたデザインです。
現在、一番人気のパッケージはカラフルなデザインの「くがにちんすこう」。
開業当初に制作した「くがにちんすこう」のパッケージがこちら。シーサーの絵柄や高級感あるゴールドの差し色は、お中元やお歳暮などにも人気があるようです。
古典柄で渋めなカラーテイストの紅型イラスト。
法事の引き出物用のパッケージ。沖縄の海と波をイメージし、魂が静かに波に乗って彼方へと運ばれていく、そんな幻想的なシーンを描いているかのようです。
さまざまな内祝いに対応したオリジナルの熨斗紙は4種類。出産の内祝いならば命名紙も用意でき、命名センスが光る“新垣琉太郎”は架空の人物だそうです。
今後、続々と登場!うるま市の山芋「ヤマン」を使ったお菓子
元々は野生で育っていた大きな山芋の「ヤマン」。うるま市で栽培された「ヤマン」を使って何か商品開発できないかとスタートした今回の商品化。
今後続々と新しい商品が登場する予定だそうです。
2015年9月に発売された「くがにやあ かるかん」。商品開発で難しかった点は、粘り気の強いヤマンが他の材料となかなか絡み合わず、途中幾度も困難を極めたそうです。量を変え、材料を変えながら試作品を作り続けた結果、愛媛県産と鹿児島県産の山芋を少し加えて完成したかるかん。
粘り気が強くて軟らかい特徴を持つヤマンをメインに使い、手作業で製造している沖縄風かるかん。味はプレーンとバナナの2種類で食べてみると割りとズッシリ感ある食べ応えです。
来店時は試食があるのでぜひ味見をどうぞ。
商品はこの半透明のビニール袋に入れてもらえます。
ちんすこうには「粟国の塩」を使用し、丸型のちんすこうが特徴的。1個ずつビニール袋に梱包されているので大人数で分けるのも簡単です。
そして店内にはちんすこうの試食が置かれています。
2016年3月に発売予定のクッキーは「琉球ぽるぼろん」。ぽるぼろんとは、口の中に入れると溶けてしまうスペインのお菓子です。ぽるぽろんを口の中に入れてから溶ける前に3回願いごとを唱えると願いが叶うといわれているとか。
父の動向に協力し合い、新垣家の家族が中心となって営業する店「くがにやあ」には、TVドラマに出てきそうな家族愛のストーリーが詰まっているようです。そんな「くがにやあ」の店内はこじんまりとしていますが、アートなパッケージデザインと新しい琉球風菓子が並ぶ沖縄の「おいしい美術館」といえそうです。