イベント会場でThe SCARPETTERSが人気の理由
なぜこんなに人気があるのだろうか?とふと疑問に思って調べてみると、那覇市内で人気の高いイタリアンの店「BACAR(バカール)」が運営していたからだった。
BACARといえば、リピーターの間では「焼きたてピッツァが絶品!」と評判高く、一度食べたら病みつきになるほどパンチの効いたピッツァだ。ピザ生地はもちろん、トマトやチーズなど、ひとつひとつ素材の味を生かしたまま、オーナーが熟練のワザで短時間にピザ窯で焼き上げていくピッツァはオリーブオイルが滴り、格別の味である。
この大型のイエローバスThe SCARPETTERSは、そんな那覇の人気店BACARのオーナー仲村大輔さんが約2年間の構想を経て実現させた移動式バスのピザ屋さん。委託業者にバス内を改造してもらったが、車内を改造するにもルールがあり、必要な許可や申請などに時間がかかったらしい。
「那覇の店舗だけでなく、県内のいろんな場所でこのピッツァを食べてもらいたい」とのオーナーの思いから始まったThe SCARPETTERS。ここ最近は、県内の大規模なイベントに出店しているようだ。
The SCARPETTERSのバス内で焼き上げるピッツァ
イベント時のスタッフは総勢20名ほど。イベント当日は、朝から設営準備に取りかかり、5〜6時間は働きっぱなし。撤収時もまた大変な作業が待っているらしい。
第1回目のOKINAWA FOOD FLEAの時は、ピッツァの数量を少なく見積もってしまい、あっという間に完売。だから2回目からは多めに用意するようにして、1度など約500枚のピッツァを準備して見事に完売したそうだ。
「さすがに500枚のピッツァを作って焼くのは身体がもたないので、次からは少し数量を減らしましたけどね。笑」と仲村さん。
左側の写真は仲村さんを描いた看板で、右側が本物の仲村さんである。
イベント時にバスの中で撮影させてもらったところ、ピッツァを焼くガス窯の熱も手伝ってか、バス内の気温は非常に暑い。そんな中、集中力を欠くことなくオーナーのピザ作りのスピーディーな手さばきが止まらない。
ピザ生地を丸く伸ばして、ピザソースを塗り、具材をトッピングしていく。作業時間を図ってみると、1枚のピッツァが30秒前後で作られていた。筆者が写真撮影するのにひと苦労するほど短かい時間である。
ガズ窯で焼き上げたピッツァを別のスタッフが数秒でカットしていく。その隣には会計と商品を受け渡すスタッフが待機し、流れ作業の導線ができ上がっていた。何度ものイベント経験を経て改善されてきたであろうスタッフの動きには無駄がなく、お客様の手元に素早く焼きたてのピッツァが提供され続けていた。
「楽しくおいしく食べられるピッツァを」とイベント限定のオリジナルピッツァを用意することもあり、ピザ生地を使ったサンドイッチや他店とコラボしたオリジナルメニューを販売したこともあるそうだ。
そして、行列を成していたお客様の手元に焼きたてのピッツァが渡されていくのであった。
そんな「The SCARPETTERS」がスタートするまでの道のり
それは2010年9月、MONGOL800のキヨサクさんから誘われて、屋外ライブ「800だョ全員集合!!」に参加したのが初出店のキッカケ。この時はまだBACARの店名で参加していて、ピッツアの提供はしていなかった。
それから1年後の2011年9月、仲村さんが「薪で焼くピッツァをいつか屋外で販売してみたい」と話していたところ、同じくMONGOL800のキヨサクさんにまた誘われて野外ライブの「What a Wonderful World!!」に出店する。しかも話が決まったのがイベントの約3週間前で、出店が決まってからの「薪窯トラック」の制作準備がまた大変だったらしい。
まずは、ピザ窯作りから。窯職人に相談を持ちかけると、窯の持ち出しはある意味危険でもあり、車の振動などで移動中に崩れるかもしれない。簡易的に窯を作れると思っていた予測を見事に裏切られ、窯作りの構想は難易度を増していった。「でも、やっぱり自分達で窯を作ろう!」とスタッフと話し合い、専門知識を持つ沖縄芸術大学の先生からアドバイスをもらって皆で考え続けた。
窯の屋根を2重構造にして耐熱性を上げ……と窯の構造を練り、窯を制作し始めたのがイベントの2週間前。急ピッチで作業が進んでいく中、やっと窯に火入れできたのがなんとイベントの前日だったという。そしてイベントの本番当日に臨むも実際にはなかなか窯に火が入らず、1日中試行錯誤を繰り返す。
イベント2日目は、テナントの設営場所が変更したこともあり、窯の設置場所を移動。すると火の構造が変わってしまい、やはりなかなか上手くピッツァが焼けない。窯の中の薪や火の位置を動かしながら現場で試行錯誤する作業が続き、初回のイベント時は大変だったそうである。
しかし、仲村さんはいう。
「大変だったけど、屋外で焼くのもおもしろいなと思ったんですよね」
そして2012年10月に正式な2トントラックに窯をのせた「薪窯トラック」が完成。2012年からThe SCARPETTERSに改名して活動し始めた。
その後、仲村さんがハワイへ行った時に発見したストリートフードの「フリフリチキン」に刺激を受けたのをキッカケに「フリフリチキントレーラー」を制作。
このトレーラーでは、やんばる(北部)のチキンを使った「フリフリチキン」を焼いている。
そして最後に完成したのが、構想からバスの改造までだいぶ年月を費やした移動式の大型イエローバスだったのである。
「The SCARPETTERS」の今後の展開
県内のイベントに出店しているThe SCARPETTERS。今後の展開としてオーナーが考えているのは、The SCARPETTERSの基地を作ること。
「イベント用の料理の仕込みができる作業場を作りたいんです。あちこちのイベントに出店することを考えると、場所は沖縄本島中部が移動に便利ですね。あと現在は自宅のガレージを作業場にしているので、さすがにこの大型バスを停めるほどスペースがないんです。笑」
The SCARPETTERSのイエローバスはうっかりすると、米軍基地周辺を走行するアメリカンスクールのイエローバスと見間違えそうになる。
だからThe SCARPETTERSが有名になった暁には、逆にアメリカンスクールのバスが走行するのを見て「あっ。そろそろあの焼き立てピッツァを食べに行かなきゃ!」と思い出してくれる、そんな未来が待っているかもしれない。
那覇の店舗BACARを軸にして知り合いが増えていったという仲村さん。東京で修行を積んだので、その際にお世話になった方の口コミ紹介で来店するお客様も少なくなく、人とつながる機会がさらに増えているらしい。そのつながりが縁となり、大きな人の輪となり、そこからいろんな活動が生まれていく。
「人って、その時必要としてるヒトやモノと自然と出会えたりしますよね」
これからThe SCARPETTERSはどう進化していくのだろうか。今後の活動と展開がとても楽しみでならない。
そして朗報!来年2017年、テイクアウトショップをオープン
2017年2月予定で、北谷町の砂辺海岸近くにThe SCARPETTERSの新しいガレージを設け、テイクアウトショップをオープンするそうだ。この周辺は海が近いこともあり、天気が良ければ砂辺海岸の景色が最高だろう。
沖縄でおいしいピッツァを堪能できるいい機会。イベント出店情報は、The SCARPETTERSのFacebookページで確認できるので、要チェック。