素朴な佇まいの木造のカフェは、宮大工が設計・建築した頑丈な造り
店主の熊谷さんは、「このカフェは、沖縄の知恵が詰まった家」なのだと話す。
自然の素材や木の素材で宮大工が設計・建築した木造のカフェは、海風が直撃する高台に建つが、宮大工の技術が施された頑丈な造りで、大きな台風が来た時でも雨漏りひとつしなかったという。
「沖縄の大工さんって、すごいなと思ったんですよね」と店主の熊谷さん。
メラピーの木で作られたテーブルは、木工作家の西石垣友里子さん作。椅子は、宜野湾市のSmile-F(スマイルエフ)に中古の椅子をリメイクしてもらったもの。
奥の座敷は、センダンの木で作られたテーブルが置かれている。
天気のいい日は窓を開け放ち、開放感が半端ない。その先には海と水平線を眺められ、縁側にはテラス席もある。
カフェで使用する器は、主に沖縄県内の作家の作品
使用する器は、基本的に小泊良さんや赤嶺肇幸さん、大嶺實清さんなど、沖縄県内の作家の作品が多いそうだ。
「すべてを個性的で高価な器にしてしまうと、お客様が構えてしまうと思うので、日常使いもできる読谷村・北窯さんの民芸陶器なども使っています。いろんな器があると自由な感じだし、おもしろみがあっていいのかなと」と話す店主の熊谷さん。
カウンター席には、カフェで使用している個性的な焼き物が並ぶ。
沖縄・名護市に工房を構える「木漆工とけし」の漆の器も使用。オープン当初は、すべて沖縄県内の作家の器を使用していたが、現在は、県内外問わずに好きな作家がいたら購入しているそう。
沖縄という括りの中で、器の可能性や面白さを模索しながら、店主自身も楽しんでる、そんな印象を受けた。
植物性食品で作る「こくうプレート」は、
素材を活かしたシンプルな味付け
農薬不使用の有機野菜を栽培する今帰仁村の片岡農園から野菜の9割を仕入れ、すべて沖縄本島北部の野菜だけを使用。できるだけ農薬不使用の野菜を使い、素材そのもの味を生かしたシンプルな味付けで料理を提供している。
「あまり手を加えてしまうと、せっかくの野菜のおいしさが消えてしまうので、野菜の味としっかり向き合い、シンプルな味付けにしています。苦いものは苦く、本来野菜の持っている味を素直に出す感じで。例えば、沖縄の赤土大根なら渋みが強いので、少し薄めの2番ダシで炊いてあげると優しい味になる。春が来たなっていう味、菜の花みたいな。笑」
そう笑顔で話す店主の熊谷さんは、もともとは和食の調理人だった。だから野菜や豆やキノコ類などの植物性食品を使い、主に和食を提供している。しかし、ダシのみ動物性のかつお節を使っているため、「ヴィーガン料理ではない」そうだ。
このカフェの食事は、30品目以上を使った「こくうプレート」(1,200円)のみ。県外にはないような沖縄独特の野菜を多めに使っているのも人気の理由だろう。
長岡式酵素玄米のご飯は、専用の圧力釜で炊いて4日間保温し、毎日1回かき混ぜて発酵させるそうだ。小豆の色が米につき、やや塩味が効いたご飯が出来上がる。食べてみると、もっちもちで雑穀米好きには、たまらない味と食感だろう。
青の小鉢は、カリフラワーと白いんげんを島ニンニクでソテーしたもの。写真左上の小鉢は、赤土大根と小松菜の煮物だ。
プレートには、ほうれん草ともやしのゴマ和えや今帰仁村の棚原豆腐店の島豆腐。じゃがいもをパクチーと一緒に蒸して、オリーブオイルと塩で炒めたものも。春菊と島ニンジンは、炒ったクルミをすりおろして黒糖で少し甘みを加えている。
小鉢は、レンズ豆・セロリ・パプリカ・きゅうりを合わせ、シークワーサー果汁の酸味が効いている。フェンネル(沖縄の方言でイーチョーバー)の花は、エスニック風の味付けで。
そして、片岡農園の野菜を揚げた天ぷらが絶品だった。
セロリの葉の天ぷら。スナップエンドウは、1番ダシに島酒と醤油を加えて煮浸しにして3日間漬け込んでから揚げる手の込んだ天ぷらだ。沖縄の塩をサッと振りかけている。
と、ここまでいろいろと料理の説明をしてきたが、こくうプレートは、日ごとに季節の新鮮野菜を使って調理するため、食材が少しずつ変わる。ここは、当日のお楽しみにしておいてほしい。
こちらは、レーズンとクルミのマフィン。焼き菓子もすべて自家製で、日ごとに数種類を用意。夏場は、冷たいスイーツもあるようで、ティータイムとして訪れるのもいいだろう。
シークワーサージュースのグラスは、読谷村にあるガラス作家・おおやぶ みよさんのギャラリー「日月 hizuki」のもの。
日常の暮らしの中での使い勝手がよく、持った時にとても手に馴染む。ガラスの透明感にも魅せられ、1点1点が手作りのオリジナル作品だ。
まるで、今帰仁村の天空の城!?ぜひ快晴時に訪れてほしいカフェ
縁側のテラス席からの眺めが、天空から海を見下ろすような爽快感。心も身体も疲れ切ってる人が周囲にいたら、是が非でもオススメしてほしいカフェである。
カフェの正面には、伊是名島と伊平屋島が見えるが、この日は薄っすらだったので、白枠で印をつけておこう。
野菜を作る農家や器を作る作家、そして設計・建築を担当した大工など、カフェを作るまでには、多くの人達の協力があった。
だから、時間をかけて1個1個の野菜を優しく洗い上げ、じっくりコトコト丁寧に調理する。地元のおいしい野菜をたっぷりと食べてほしいから、味付けはシンプルに、野菜の素材の味をそのまま生かして。
カフェこくうは、おいしい野菜を求めて来店するお客様と地元の農家をつなぐ架け橋にもなっているのだろう。