空と海のまん中を突き抜けるようにまっすぐと伸びる来間大橋を渡り切って、坂道をぐっと上がった先には、カフェやお土産屋などお洒落なエリアがあり、多くの観光客で賑わっています。その喧騒を越した先の集落内に小さな食堂があります。名前は花風(はなふう)。
地域住民御用達のこの食堂でしたが、おいしいご飯が食べられるという、噂を聞きつけて訪れる観光客も増えてきています。島人に混じって、花風で宮古そばをすすってみれば、そして隣で同じようにそばをすする島人と会話を交わしてみれば、その旅は現地の暮らしに近づいたような、自分も島人になったような気持になることでしょう。来間島の小さな食堂・花風は、そんな場所です。
グルメ
2017.09.28
[来間島]の小さな食堂・花風
素朴な暮らしと旅人を繋ぐ場所
writer : 砂川葉子
昼はランチ、夜は居酒屋。島のおいしい家庭料理がいただける
コンテナを改装して作られた花風の店内は、飾りっ気なく、シンプルすぎるほどシンプルです。
ランチタイムのメニューはホワイトボードに書かれた数品で、どのメニューもとてもリーズナブルです。宮古そばは400円、定食類もすべて500円から。
花風の定番メニューともいえる生姜焼き定食は、家庭的な趣があり、とてもほっとさせられます。この日、添えられたみそ汁の具はアサリでした。花風の女将の具志堅チエコさんが来間島の海岸で採ってきたものです。蟹が採れれば蟹汁になったり、野菜が豊富な時期は具たくさんの味噌汁だったり、小さな島の恵みが小さな椀にさりげなく盛り込まれています。
ピーマン、ニラ、ネギ、ゴーヤなど、食堂で使う野菜は、ほぼチエコさんが自身の畑で育てているそうです。沖縄そばや生姜焼きにも添えられた島ネギも、畑で採ってきたばかりなのでしょうか?スーパーで売られている野菜よりも、より強く香り、鼻孔をくすぐります。
花風が地元民にも観光客にも愛される理由
花風の女将、具志堅チエコさんは、かつては東京の板橋区で沖縄料理店を営んでいましたが、年老いた両親の暮らしを手助けするために島に戻ることとなります。そして、惜しまれつつ閉店した東京・花風は、2016年に故郷である来間島で再復活します。当時、来間島には食堂がなかったため、開店日には地域住民が駆けつけてお祝いをしました。以来、花風は島民とともにあり続け毎日大盛況です。
それにしても、こんなに安くて大丈夫なの?って他人事ながら心配になってしまうほどですが、「ほら、野菜なんかは畑で育てているからさ。それに安いほうがいいじゃない?みんな?」とチエコさんはにこやかに笑います。
一人暮らしのお年寄りが訪れれば、毎日泥と汗にまみれて働く農家や労働者達も通うようなお店です。時には、東京・花風時代のお客さんが訪ねてくることもあります。遠くから訪れた旅人も、島の暮らしも思いやるような、花風はそんなメニューと値段になっています。
地元民との交流に花咲く、夜の花風
夜の花風のお客さんはほぼ地元民ばかりです。となると、観光客としては何となく気後れしてしまうものですが、お客さんで来ている島人達もとても気さくに声をかけてくるので、地元民と旅人の交流が自然と生まれます。アットホームながら、島ならではディープな雰囲気に溢れていますよ。
夜の花風は、生ビールが300円という安さで、酎ハイも400円。夜のメニューで人気なのは、レバニラです。生姜や酒で漬け込んだ厚切りのレバーは臭みがなく、表面はカリッと焼かれています。ランチタイムでも定番メニューの高菜焼きそば、高菜チャーハンは、塩気の効いた味付けが泡盛によく合いますよ。
来間島の花風では、おいしい食事と旅人達が島人にぐっと近づけるようなひと時が味わえます。小さな島の食堂にこそ旅の楽しみがあるかもしれません。
昼も夜も来間島の花風にんみゃ~ち!(いらっしゃいませ)
スマートポイント
ライターのおすすめ
現地ライター砂川もちょいちょい、いや、かなりの頻度に出没する贔屓の食堂です。夜の出没率が高いけど…
砂川葉子
岐阜県出身、宮古島諸島のどこかの小さな島に在住。農業と民宿業、島興し業と並行してライター業にも携わる。
INFORMATION
スポット名 | 食事処花風(はなふう) |
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住所 | 沖縄県宮古島市下地字来間130-2 |
ジャンル | 居酒屋 |
電話番号 | 0980-76-3770 |
料金 | 400円~ |
営業時間 | ランチ11時30分〜14時、夜18時〜23時 |
定休日 | 不定休 |
駐車場 | あり |
備考 | 表示価格はすべて税込みです |