国の重要無形民俗文化財に指定されている西表島祖納・干立地区の「節祭」(シチ)。2016年は11月13日から15日の3日間、両部落にて行われました。節祭は「農民の正月」ともいわれ、1年間の農作の感謝と五穀豊饒、健康と繁栄を祈願する、西表最大の祭事で何と500年以上も伝承され続けられています。祭事の見所は2日目の「世乞い(ユークイ)」。祖納・干立の住民の方々はもちろん、郷友まで総出で伝統芸能や舟漕ぎの奉納が行われ、神々へ豊年祈願をします。今年は運良く、祖納・干立両部落のユークイが見られる日程だったので行ってまいりました。今回は祖納のユークイについてお知らせいたします。
季節特集
2016.12.31
[西表島]で最大の伝統行事
心に響く奉納芸能、祖納の節祭
writer : 池田麻紀
節祭特別プランで、お得に快適に現地まで!!
毎年節祭当日は各船会社から「節祭特別乗船券」が発売されます。通常は石垣~上原の乗船券は無料送迎バス利用(船浦港から白浜間)で往復3,910円(平成28年11月現在)、ですが、この節祭特別乗船券なら3,400円!(各会社共通料金)。通常料金より510円もお得になります!
今回は安栄観光を利用。高速船で45分ほどです。船内も広く快適でした。
着いたらすぐに送迎バスに乗り込みます。大きくてきれいな観光バスです。
途中浦内川の壮大な景色を楽しみつつ、上原港から20分ほどで祖納の節祭会場である前泊浜前で下車します。
前泊海岸。この日は晴天で海が素晴らしい景色でした。
会場に向かう前に、トイレを確認しておきましょう。海沿いにできたばかりの新しいトイレがあります。しかもウォシュレットで離島を感じさせない快適さです。赤ちゃんや幼児が休憩できる東屋も併設されているので、お子様連れの方は利用するといいでしょう。
会場に到着しました。海沿いにテントがたくさん並べられており、その中は地元の人が座り食べたり飲んだりしながら思い思いに祭りを楽しんでいます。
婦人会の皆さんがおいしそうな牛汁を振る舞っていました。
解説つきで、ゆっくりとユークイを楽しもう。
節祭2日目ユークイの儀式はメイン行事となるフニクイ(船漕ぎ)が満潮時刻に行えるよう、逆算して始まります。よって開始時間は毎年変わり、今年は11時スタートでした。
公民館で演者を激励する儀式から始まり、二番旗頭を先頭に弥勒(ミリク)行列が前泊海岸へ出発。
一行が海岸に恭しく到着すると、男子芸人達がかけ声とともに、二艘の爬龍船(ハーリー)を岸から海に放つ、「舟浮かべの儀式」を合図に、ユークイの開会宣言。奉納芸能の幕開けです。
親切なことに、現地では演武ごとにマイクを使った司会進行が行われるので、観光客の人でも祭りの内容がよく理解できて、より楽しめます。
奉納芸能の最初は、一番旗頭を先頭に船子(船の漕ぎ手)が入場して、勇壮な櫂踊り「ヤフヌティ」を披露します。
その後曲は「弥勒節」に変わり、二番旗頭を先頭にミリク行列が入場。観客の皆さんが唄に合わせて手招きを始めました。それに誘われるようにミリク様ご一行は、ゆっくりと船元の御座に上がり、着座しました。
ここ祖納でしか見られないフダチミに注目!
流れる音楽は「ユナハ節」に変わり、三番旗頭を先頭に黒装束のフダチミ2名が、ファーマー(女芸人)達を従えるアンガー行列が入場してきました。
このフダチミは祖納の節祭でしか見られない貴重な姿。お祝いの場なのに、全身黒ずくめの出で立ちには諸説あるそうですが、詳しくは解明されていないようです。フダチミの歴史はミリク神より古いともいわれており、謎めいていて、神秘的な存在のようです。
その後、フダチミとアンガー行列も御座へ着座します。
フダチミはここ祖納ならでは。ぜひ浜辺でのフダチミとアンガー行列絵巻は写真に収めておきましょう。
見応えのある奉納芸能はどれも見逃せない!
ミリク神が御座で見守る中、奉納芸能が始まりました。
まずは、男子芸人による狂言です。櫂を股に挟んで方言で口上を述べながら、力強く演じます。
続いての棒術演武は、祖納地区の青年を中心に、小中学生や島外の高校に通う高校生、またこの地域に移住・赴任している島外の男性も参加しているとか。皆さんこの日のために、地域の方より指導を受けて熱心に練習を積み重ねてきたそうです。その真剣な表情、気迫の演武は見応えがあります。
ここで御座の中にて、ミリク神の舞が弥勒節とともに始まりました。ミリク様の舞に合わせて観客の皆さんも弥勒節を口ずさみ、楽しそうに手拍子や手招きをしています。
そして、奉納芸能のクライマックスとなる、祖納の祝舞「まるま盆山」が披露されました。まるま盆山とは前泊海岸の少し沖にある小さな離れ島のことで、そこに住むシラサギの1日の行動を唄と舞にしたそうです。演者の女性達の頭に載っているのは、そのシラサギなのです。
実際のまるま盆山を背に優雅に演舞が行われるのを、静かに穏やかに見守る観衆。碧い海と空の下、太鼓と唄だけが響きます。
ここ祖納に生きる人々が500年以上もの長い歴史の間、もっとも大切にし、守り続けてきた伝統行事。時に撮影の手を止めて、芸人、観衆のみなさんの表情を見てみると、祭りへの想いに溢れ、感動が押し寄せました。
祖納地区の日常生活を垣間見る。
この後、メインの「舟漕ぎの儀式」、厄払いの「獅子舞い」と続くのですが、お隣の干立のユークイのスタート時間となり、レポートはここまで。
記念のお土産には節祭オリジナルボトルを(八重泉・請福あり)。3合瓶で各1000円でした。
祖納の集落を歩きながら、昔ながらの風景や古民家を散策。時間がとてもゆっくりと流れています。
集落の中に数件民宿・ホテルがあるので、祭りを最後まで堪能したいひとはぜひ宿泊して楽しまれては。
食料品などは、祖納バス停すぐの「スーパー星砂」にて。お弁当やパンなどもそろいますよ。
お隣の干立地区までは約1km、歩いて15分ほどで移動できます。
スマートポイント
- 潮の干満で祭りの日程が決まるので竹富町観光協会にて下調べを。竹富町観光協会ファンサイトのfacebookページにも掲載されます。それに伴い宿泊の手配が必要な場合もあり。
- 古い歴史のある厳かな伝統行事なので、地元の人優先で観させていただく気持ちで。見学・写真撮影はマナーを守り、地元の方の指示に従ってください。
- 祭りが行われる10月11月はまだまだ真夏日の日も多いので、熱中症予防対策は必要です。近くのスーパー星砂にて飲み物購入できます。
ライターのおすすめ
交通費がかなりお得になるこの時期に、西表島の観光と合わせていくのもいい。浜辺で行われる演舞の撮影ベストポジションは、地元の方々用のテントすぐ横の防波堤。
池田麻紀
三児の母。アロマ屋さん。島の小さな手作り市「ぬちぐすい市」を主催。