季節特集
2015.03.25
闘牛vs音楽!
~音牛Splash~
writer : Hinata
沸き立つ会場
雄牛は声高に雄叫びをあげると、前足で土を勢いよくかき上げた。
もうもうと舞う土煙のなか体を荒く地面に擦り付ける。
興奮は最高潮に達し、
雄牛は手綱を引く男を引きずりながら鼻息荒く対戦相手の登場を待つ。
にわかに会場が沸き立つ。
突然、対戦相手の雄牛が会場に勢いよく走り込んで来たかと思うと、
互いの角を激しくぶつけ合わした。
振動が客席まで伝わるほどの物凄い衝突だ。
闘牛の勝敗は、どちらかが逃げるまで決まらない。
幾つかの決め技もあり、アナウンサーが穏やかながらも興奮を持って
それらを解説していく。
試合が激しくなっていくと会場のかけ声が次第にヒートアップし、
沖縄独特の指笛や太鼓が鳴り響く。
さっきまでおだやかに話ししていた後ろの席のオジー達も、
声を張り上げて雄牛をあおっている。
若者よ、闘牛を見に来い!
闘牛の歴史は長く、戦争の影響で途絶えかかっていたものの見事に復活、
第一次、第二次の黄金期を経て今に至る。
ピーク時にはひと会場で一万人を集めたとも言われる闘牛だが、
現在は若者が足を運ぶ機会も少なくなりつつあり
大事な伝統文化の存続が危ぶまれているという。
そんな中、面白いやり方で闘牛と若者を繋ごうと計画を立ち上げた
プロジェクトチームがいた。
CRAZY 8 ENTERTAINMENT、略してクレパチ。
様々な職種の仲間が集まって結成されたイベント企画ユニットだ。
彼らは石川闘牛組合と組み、
歴史上始めての闘牛×音楽のイベントをぶち上げた。
この少し違和感のある組み合わせ…
一体どんな風なイベントになるのか全く想像がつかない。
だけど、「音牛Splash」というタイトルのあまりのインパクトにつられて
当日会場まで来た若者達は、私達を含めて結構いたのだ。
一瞬、走り抜ける緊張
闘牛は4月が特に盛り上がる時期で、県内各地で大会も開かれている。
老若男女問わず一緒に盛り上がる事のできる数少ない伝統的娯楽だが、
年間を通して県内の様々な会場で開催しているので興味があれば誰でも
自由に参加することができる。
円形の土の広場で試合できるようになっていて、そこを中心にすり鉢状に
客席があり、そこでは闘牛歴何十年みたいなオジー達が昔から変わらない
風景のように試合の番付表を見ながら方言でおしゃべりしている。
今日は音楽ライブもあるという事もあり、会場にはオジー達に混じって
若い男女や子供たち、外国人も沢山いてまさにチャンプルー状態。
ほんわかしたムード…だけどそれは一瞬にして鋭い緊張となり変わる。
闘牛が、煽り役の男を投げ飛ばした。
更に角ですくい投げ、男の背中に頭突きをくらわす。
一瞬、死という文字が頭をよぎる。
すんでの所で、彼は救出され助かった。
そう、これは軽い娯楽ではないのだ。
雄牛達の真剣勝負に私達は立ち合わさせてもらっている。
こんな事故はめったに起こる事ではないかもしれないが、
お陰で大事な事を教えてもらい、心がキュッと引き締まった。
心に残るリアリティー
この日行われた10試合の、どれもが個性的で素晴らしかった。
雄牛の性格が完全に出るから闘牛は面白い。
熱を入れ込むオジー達の気持ちもよく分かる。
二部に行われたライブは、
それとは対照的にゆるりとしたムードで体をリラックスさせる。
地元アーティスト達の出演と、
本日メインのモンパチの上江洲清作&The BK Sounds、
そしてその仲間達による音楽。
会場の若者達も土の広場まで降りてきては楽しそうに踊っている。
子供達はみな、飽きる事なく土の広場をあちこち駆け回って遊んでいた。
物販コーナーも、
古くて新しい斬新なデザインタオルなどここだけのオリジナルが面白い。
食べ物屋台もあってちょっとした祭のような賑やかしさだ。
今回、闘牛を初めて見た若者は相当数いた。
彼らが今日の試合をどう感じていたかは、
二時間という長い試合のあいだ中
ほとんど席を動かずに見ていたという事実が物語っている。
今日、闘牛場の存在が一気にグッと近づいた。
「音牛Splash」は一度で二度楽しめる贅沢イベント。
第二回目の開催もそう遠くはないだろう。
文章 Hinata
写真 Yoshiaki Ida
イベント情報
闘牛だけのイベントは、沖縄では試合内容にもよるけど大体
2,500円~3,000円に設定され、県内各地で開催されています。
うるま市石川多目的ドームにて開催された今回は何と、
闘牛に音楽ライブもついての3,000円!
丸一日遊べる上にこの料金、このイベントはホントにお得ですよ~♪
CRAZY 8 ENTERTAINMENT FBページ https://www.facebook.com/crazy.8.entertainment.crapachi
Hinata
神戸出身。西表島の生活を経て沖縄本島へとたどり着く。独自の感性で沖縄の物語を伝える。