泡盛は沖縄が誇る県の特産品の一つです。もともとは琉球王国時代の高価な献上品として管理されていた泡盛が、戦争を乗り越え、どのような人々の
思いと努力で日本が認める酒として受け継がれて来たのか。そこには伝統を大切にしながらも新しい挑戦を続ける泡盛酒屋の姿がありました。
観光
2024.11.13
通が認める泡盛「松藤」の
おいしさの秘密はここにあり!
writer : Misa Alta
「崎山のサキ(酒)」から「松藤」が生まれるまで
崎山酒造廠(しょう)は崎山オトさんという女性によって明治38年(1905年)に泡盛村と呼ばれていた首里赤田で創業されました。オトさんの実家が酒屋だったということもありますが(現在の、まさひろ酒造です!)、あの時代に女性が酒屋を起業したとは、とても芯の強い人だったに違いありません。そして、2代目として蔵を継いだオトさんの息子の起松さんは藤子さんと結婚します。藤子さんは10名の子どもを育てながら、蔵で酒造りも行っていました。起松さんは、ブランド名がなく、「崎山のサキ」と呼ばれていた泡盛に夫婦二人の名の一文字ずつをとり「松藤」と名付けたそうです。
今や崎山酒造廠の代名詞ともいえる松藤ですが、起松さんが藤子さんを妻としてだけではなく、志をともにする同志として敬意を持っていたことがうかがえます。こうして誕生した松藤は縁起が良い夫婦の酒として、結納や記念日に好まれているそうです。
恩納岳から生まれる天然水
起松さんは戦後、官営泡盛製造所の伊芸酒造廠の工場長に任命され、現在蔵がある、金武町伊芸へ移ってきました。昭和24年(1949年)に官営は解かれますが、社名に付いている「廠」は官営だったという名残です。硬水が多い沖縄において、伊芸地区の水は硬度30~40の軟水です。
この水は恩納岳に降った雨が地中を通って濾過されて流れている、天然の伏流水です。水源地が米軍基地内にあるので、滅多に人が近づけないために手つかずの自然が残ったままです。驚いたことに、伊芸地区には区の運営する浄水場があり、各家庭にはこの天然水が引かれているそうです。このように崎山酒造廠では、恵まれた土地で天然水をふんだんに使ったおいしい泡盛づくりができるのです。
職人の技が間近で見られる酒蔵見学
崎山酒造廠では、無料で酒蔵の見学ができます。前もって予約を入れることもできますが、案内できる従業員がいれば、飛び込みで来ても対応してくれるそうです。蔵の床や柱は起松さんが伊芸へ移ってきた当時のままだということで、年季を感じます。酒蔵見学は実際に職人が働いているすぐ横で泡盛作りの工程を見せてもらえます。麹を生育させる過程での手入れという作業は昔ながらの三角棚と呼ばれる場所で丹念に行われます。
3日間かけて生育させた麹は三日麹と呼ばれ、さまざまな香味成分の元が生成されるそうです。
仕込みの段階では米麹、水、種もろみ、そして蔵に住み着いた家つき酵母が混ざり合って、もろみが仕上がるそうですが、仕込みタンクのある場所は
甘いような、ちょっと酸っぱいようなフルーティーな香りが漂っています。その後、単式蒸留機で蒸留し、簡易濾過を行った後、タンクや甕の中で六か月以上寝かせてから出荷するそうです。
温故知新で常に進化する崎山酒造廠
現在、4代目の和章さんの代になった崎山酒造廠で泡盛作りを見て感じるのは、伝統や先人の知恵を生かしつつ、新しい力やアイディアとうまく融合させている、ということです。工場では、古くから使われてきた泡盛作りの道具とコンピューターを使い、若い職人に伝統の技が継承されていました。
この伝統を大切にする心と新しいものを取り入れる柔軟さが、泡盛の味に磨きをかけ、多くのコンクールや鑑評会において、高い評価を得る結果につながっているのかもしれません。そして、崎山酒造廠では、泡盛だけにとどまらず、新しい商品の開発にも力を注いでいます。泡盛と沖縄の黒糖で作った梅酒や沖縄県産タンカンをブレンドした、タンカン梅酒、また、お酒が飲めない人にもうれしい、泡盛蒸留後のもろみから作られる、もろみ酢もあります。泡盛もろみ酢には疲労回復に良いといわれているクエン酸や18種類ものアミノ酸が含まれています。そしてその他にも、お土産にも喜ばれそうな、薬膳味噌と五種類のおかず味噌もあります。これらの商品は、酒蔵見学後にショップにて試飲や試食、そしてもちろん購入する事ができます。
カクテルブックは永久保存版!
酒蔵見学の際に商品を説明した資料をいくつか貰えるのですが、崎山酒造廠で作られる泡盛や梅酒を使って作るカクテルを紹介する冊子、「AWAMORI MATSUFUJI COCKTAIL BOOK」や薬膳味噌、おかず味噌を使った料理を紹介する「酒蔵の女将仕込み 薬膳味噌」は、かなり役立ちそうです。
紹介されているカクテルの例を挙げれば、泡盛のバジルモヒート、あわもりビール、タンカン梅酒を使ったサングリアなど、今まで泡盛を敬遠していた人も、ちょっと飲んでみたくなるようなカクテルが紹介されています。
その他にもショップでは、もともとスタッフ用だったという外国人にも好評の松藤Tシャツや、沖縄県内で活躍する陶芸家やガラス作家の作った甕やボトル入りの泡盛の販売も行っています。
※こちらは、2015年12月18日公開の記事となります。更新日はページ上部にてご確認いただけます。
※記事中の写真、価格は取材当時のものとなります。
スマートポイント
- 酒蔵見学前に是非、崎山酒造廠の歴史を辿れる動画をご覧になってください
崎山酒造廠 琉球泡盛 歴史編 - 蔵のある伊芸地区には樹齢約300年になる金武町指定文化財のがじまるの大木があります。パワースポットといわれているこのがじまるの枝ぶりは見事で、一見の価値があります。
- 崎山酒造廠は2020年、社名を「株式会社 松藤」に変更されています。
ライターのおすすめ
崎山酒造廠のウェブサイトには、日本全国の松藤が飲める飲食店の情報が載っています。ぜひチェックしてみてください!
Misa Alta
沖縄には、ここにしかない興味深いモノや場所がたくさんあります。多くの人に沖縄の持ついろいろな顔を知ってもらえたらいいなと思います。
INFORMATION
スポット名 | 株式会社 松藤 (旧崎山酒造廠) |
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住所 | 沖縄県金武町字伊芸751番地 |
ジャンル | 酒屋 |
電話番号 | 098-968-2417 |
料金 | 酒蔵見学無料。物品購入に別途料金がかかります。 |
営業時間 | 8時30分~16時30分 |
定休日 | 土曜日・日曜日・祝祭日 |
駐車場 | あり |
備考 | HP:https://sakiyamashuzo.jp/ |