宮古島から橋でつながる小さな離島、来間島。
人口約170人、周囲約9kmの小さな小さな離島、来間島。
1995年の来間大橋の架橋により、観光客が増加し、
カフェやレストランといったお店がずいぶん増えましたが、
思わずほっとしてしまうような、
緩やかでのんびりとした時間が流れています。
そして、島人が小さな島の暮らしと思いを紡いできたのを感じられます。
来間島にリピーターが多いのは、
小さな島の営み、祈りが
この島に息づているからではないでしょうか?
地図上では、点でしかないような、それまで名前も知らなかったような、
小さな離島・来間島はあなたの旅で忘れられない島になるはず。
観光
2016.02.26
[来間島]海にかかる橋を渡り
伝承を守るのどかで美しい島へ
writer : 砂川葉子
伝説と神が生きる来間島
来間島を語るなら、まずここから始めなければなりません。
来間島に伝わる島を救った3兄弟の伝説です。
非常に不思議で長いお話しなので、ここではかいつまんで紹介します。
宮古島は川満の喜佐真按司(キサマアジ)の娘が生み落とした三つの卵から
産まれた3兄弟がある日来間島へと渡ると、
老婆から夜な夜な赤牛が現れ、
毎晩ひとりずつ島の人をさらっていくと聞きました。
3兄弟は力を合わせて赤牛に立ち向かい、
娘や島の人達を返してもらうようにお願いすると
島の人がいつしか豊年祭を怠るようになったから
赤牛は憤怒していると聞かされました。
そこで3兄弟は豊年祭(ヤーマス・プナカ)を復活させ、
毎年盛大に行うことを赤牛と約束し、
3兄弟が始祖となり、島は子々孫々と栄えていったという伝説です。
この伝説をもとに執り行われるヤーマスウガンは、
島人総出で執り行われる来間島最大の神事です。
来間島は、今もなお神と伝説が生きる島なのです。
来間島・竜宮展望台とユニークな展望台から望む絶景
来間島で一番有名な観光スポットは、竜宮展望台。
3階建ての展望台からは、対岸の与那覇前浜ビーチや、
青い洋上にまっすぐと伸びた来間大橋を望む絶景ポイントです。
ここには、「誰もが住みたくなる島」にすることを目的とした
誰もが優しい気持ちになれる来間島憲法が掲げられているので、
ぜひチェックしてみてください!
実は、来間島にはここ以外にも展望台があります!
木のオブジェ風の東屋がユニークなここは、通称マツ展望台。
階段の上り下りがなく、気軽に絶景を楽しめます。
マツ展望台の隣は、「東御嶽」という島民が大切にしている聖地が
あるのでそこには立ち入らないようにしましょう。
来間大橋を渡り、来間島に入り坂道をちょうど上がり切った右手、
大きなシーサーが目印の来間東農村公園は、夜の密かな夜景スポット。
展望台ではないのですが、
島の入り口近くの遊歩道の先にあるタコ公園。
こちらも切り立った断崖と群青の海を望む絶景ポイントです。
来間島の静かで美しいビーチ、長間浜とムスヌン浜、来間漁港
来間島の海は、目に鮮やかな鮮烈な青、というより、
澄んだ穏やかな青に感じるのは、
田園風景を抜けてたどり着いたせいか、はたまた人影がないせいか。
長間浜は、美しい白い砂浜が長くのびるビーチです。
砂浜近くにサンゴ礁が広がり、シュノーケルのポイントですが、
公共の海水浴場として指定を受けているビーチではありません。
その日の天候や海の状態などに十分注意の上、
自己責任での遊泳となることを心得てください
ムスヌン浜は、こじんまりとした居心地の良いビーチですが、
流れが速く海水浴には、残念ながら不向きなビーチです。
長間浜もムスヌン浜も、
どちらも美しい夕日に出合えるスポットです。
私のオススメは、来間漁港わきのビーチ
奥の防波堤の向こう側のビーチは、
まだあまり知られていない穴場ビーチです。
与那覇前浜ビーチと伊良部大橋を望む美しいビーチですが、
長間浜同様に公共の海水浴場ではないことを心得てくださいね。
来間島の歴史と文化を感じるスポット、雨乞い座と来間ガー
来間島には歴史深い場所がいくつかあります。
来間島を島建てした3兄弟が植えたとされるデイゴの木がある雨乞い座。
もともとは3本あったのが、何者かに切られ現在は2本のみが残っており、
雨乞い座ではヤーマスウガンの際には奉納舞踊が行われます。
マツ展望台わきにある石段を降りれば、
島の命綱であった来間ガーという井戸があります。
その昔島民は、島の北崖下の海辺近くの湧泉・来間ガーへ
40m以上の断崖絶壁の細く険しい、手すりもない石段を
何度も往復し、水を運んだといいます。
現在、来間ガーは使用されていませんが、
島人は今もなお年に数回井戸への感謝の祈りを捧げます。
先に紹介したムスヌン浜も、タコ公園も、島の様々な伝承や神事にかかわる
島民にとって非常に意味深く大切な場所で、
島の人々が代々に渡りその美しさを守ってきました。
ただの観光地としてでなく、
そんな島人の思いや歴史、祈りも感じてもらえたらと願います。
来間島の新しい風、変わるもの、変わらぬもの
来間島は来間大橋開通後、観光客が増え、
また本土からの移住者やUターン者が増加し、
新しい産業、新しい風が吹く中、
変わったもの、変わらないものがあります。
来間島の竜宮展望台隣の「楽園の果実CAFÉ」は、
島のマンゴー農家さんが直営する農家レストランです。
「パニパニ」は、オープンスタイルの居心地いいカフェ。
来間島に移住して10年以上なるご夫婦の細やかな優しさが感じ
「花風(はなふう)」は、島人御用達の島の食堂。
東京で沖縄料理店を営んでいた島出身のねえねえのお店は、
アットホームな雰囲気の中で、ワンコインで島の味を楽しめます。
来間大橋架橋後も、昔から変わらない島のマッチャ―(お店)玉城商店。
島のおばあが切り盛りする島にたった1件だけのお店での
ユンタク(お喋り)も小さな離島ならではの体験かも。
来間島に吹く風のようにゆったりと
美しい島を散策してください。
スマートポイント
- 来間島の最大の神事ヤーマスプナカは旧暦9月の甲午の日に行われます。他にも、虫払いウガンやハーリー(海神祭)など、年間を通して多くの神事が行われます。
- 来間島一の観光スポットである竜宮展望台では、「来間島憲法」をチェックしてみてください。のどかで緩やかな島の雰囲気を感じられる内容で、思わずほっとしてしまいます。
- 来間島は、小さな集落で外灯が少ないため星空観測にももってこいで、ビーチでの観測は最高です。砂浜にごろんと寝転がって眺める満点の星空。ぜひ味わいに来てください
ライターのおすすめ
来間島は私自身が愛してやまぬ島です。いつまでも美しく穏やかな空気が流れる島であってほしいと願っています。
砂川葉子
岐阜県出身、宮古島諸島のどこかの小さな島に在住。農業と民宿業、島興し業と並行してライター業にも携わる。