宮古島の下地線、製糖工場のわきで、
木々で囲まれひっそりとたたずむ池田矼(いけだばし)。
琉球石灰岩の見事な石積みと美しいアーチが水面に映る緑の崎田川(さきたがわ)。
今から約300年前の、1727年に編纂された宮古島の史書
『雍正旧記(ようぜいきゅうき)』には
池田矼の存在が記されており、宮古島の歴史深きスポットのひとつです。
行き交う車にまるで見向きもされない
ひっそりとしたこんな場所ですが、降り立ってみると、
まるで古代にタイムスリップしたかのような空間に出合えました。
観光
2016.09.22
[宮古島]池田矼歴史ロマンと
島で唯一の川・崎田川で水遊び
writer : 砂川葉子
池田矼の伝承と歴史
宮古島唯一の川・崎田川の河口近くにかかる池田矼は、
琉球王朝時代、平良から上地、与那覇へ通する幹線道路に
川満大殿(かわみつうぶとぅぬ)が下地矼道(しもじこうどう)の
建設とともにかけられた矼であると伝えられています。
史書『雍正旧記(ようぜいきゅうき)』(1727年)に、
「池田矼、南北20間、横3間、高サ9尺5寸村北ノ潟陸原ニあり」という
記録が残っています。
昔、加那浜(かなはま)と呼ばれるこの一帯はひどい湿地帯で、
潮が満ちると着物の裾をからげ歩いたと伝えられており、
20間は約36m、3間は約5.4m、9尺5寸は2.85mの池田矼は
当時の人々の暮らしをどんなに救ったことでしょう。
しかし、『宮古島在番記』によると、
1817年池田矼が大破し下地矼道とともに大修理したことが記されています。
今では当たり前に車が行き来するこの場所には、
交通の要所を盤石なものするために、
先人達のたゆまぬ努力があったのです。
池田矼に立てば、気分はタイムスリップ
日本最古ともいわれる池田矼に立つことはできますが、
残念ながらその先は沖縄製糖の工場の敷地になっているため、
渡って向こう岸に降り立つことはできません。
ですが、ガジュマルが包み込む緑の空間に佇むと、
タイムスリップしたかのような不思議さがありました。
上流のほうに目をやると、
大きなガジュマルの髭が川面に向かって垂れ下がり、
人目につかぬその空間は太古の森をイメージするような雰囲気があります。
また、奥にも小さな橋が見え謎を呼びます。
山もない、川もない、といわれる宮古島ですが、
実は宮古島で唯一の川が池田矼の下を流れるこの崎田川なのです。
崎田川、そして崎田川の源流のピサガーには
古い民話が残されており今もなお語り継がれ、
また、崎田川を謡った宮古民謡も歌い継がれています。
それだけでも、この場所の歴史深さを感じませんか?
崎田川が注ぎこむ先の与那覇湾は、
日が傾きかけ、静かに水をたたえています。
宮古島で唯一の川・崎田川で水遊びを楽しむ
崎田川は、ピサガーを源流に途中いくつかの湧水を併せながら流れ
池田矼をくぐり与那覇湾に注ぎ込む全長は約900mの小さな川です。
崎田川の源流にある崎田川緑地公園は、
宮古島で唯一の川である崎田川の豊かな自然を感じられる場所です。
2015年には、
源流のピサガーは池田矼をイメージしトラバーチンで囲われ、
市民の憩いの水辺として整備されました。
宮古島で唯一の川遊びが楽しめる場所は、
週末には地元の親子連れで賑わで賑わいます。
ピサガーは、
昔からどんなに干ばつになっても水の流れが尽きることがないと
いわており、澄んだ水がこんこんと流れ落ちています。
川面の周りに青々と草が茂り、メダカやテナガエビなどが生息しています。
小さな東屋があって、ちょっと川辺で涼むのもいいですね。
しかしながら、あまり観光地化されていないせいか、
草が茂り、ポイ捨てのゴミが多いのが残念でしたが…
池田矼と冬の宮古島の風物詩
池田矼すぐわきには、沖縄製糖宮古島工場があります。
12月から3月にかけては、宮古島は製糖シーズン。
サトウキビが収穫され、製糖工場に運ばれます。
この季節は、煙突からは24時間モクモクと煙がたなびき、
工場の周辺はあま~い香りが立ち込めています。
ひっそりとした池田矼と工場から立ち上がる煙は、
正に冬場しか見れない、宮古島の光景でもあります。
宮古島の390号線、通称下地線で、
製糖工場の煙突が見えたなら、
ちょっと立ち止まって池田矼に寄ってみませんか?
スマートポイント
- 池田矼(いけだこう)は、国道390号線沿いの沖縄製糖株式会社宮古島工場のすぐわきにあり、300年前の宮古島の史書『雍正旧記(ようぜいきゅうき)』には存在が記録されている石橋です。
- 池田矼も崎田川緑地公園もあまり観光地化されていないせいか、草が覆い茂り、やぶ蚊も多いのが難点です。
- 池田矼の下を流れる崎田川は、宮古島で唯一の川です。
ライターのおすすめ
実は、池田矼に立ち寄ったのは今回が初めてでした。ほぼ毎日390号線を通っているにもかかわらず…だからこそ、この場所の価値を改めて伝えたいなと思いました。
砂川葉子
岐阜県出身、宮古島諸島のどこかの小さな島に在住。農業と民宿業、島興し業と並行してライター業にも携わる。