フェリーが到着する伊江港から3.5km。海沿いを走る県道131号を東に向かうと、さとうきび畑や牧草地の中に「ニャティヤ洞」の看板が。海側に曲がると目の前には太陽を浴びてキラキラ輝くエメラルドグリーンの海が広がっています。
伊江島に住む地元の人にとっては大切な聖地でもあるニャティヤ洞。まぶしい光の世界と深い闇とが激しいまでのコントラストをなす大きな洞窟です。入り口付近や洞窟の奥には祈りを捧げるスペースがあり、内部には奥には戊亥方神が降り立つ場所があります。
このようにニャティヤ洞は日々の祈りと切り離せない厳かな場所。そのため、伊江島を訪れる観光客にとっては裏スポット的存在なのですが、洞窟にある不思議な力を持ったビジル石を目的に、少なからぬ人が毎日この場所を訪れています。
観光
2019.11.27
[伊江島]子宝祈願のビジル石
で知られる聖地、ニャティヤ洞
writer : 福田展也
子宝に恵まれたいという希望を叶えるビジル石
ビジル石は日本各地にある力石(沖縄ではチチイシ)の一種。テレビもラジオもない時代の娯楽の一つとして若者達がこの力石を使って力試しをしていたようです。沖縄本島にも南城市の玉城には90kgの力石があり、2001年に盗難にあい、地元の新聞を賑わせたことがあります。
そのような力石とは少し違うのが、ニャティヤ洞のビジル石。なかなか赤ちゃんができない女性がこのビジル石を持ち上げると、子宝に恵まれるといういい伝えです。また、お腹に赤ちゃんがいる人がこの石を持ち上げて男女どちらの赤ちゃんが生まれてくるかがわかるともいわれています。重いと感じたら男の子が、軽いと感じたら女の子が授かるだそうです。因果関係はわかりませんが地元でもよく当たると評判だということですので一度試してみてはいかがでしょうか。
沖縄戦で多くの命を救った奇跡の洞窟
洞窟を奥に進むと青い海とつながっている大きな穴から朝の光が差し込んでいました。この穴は角度によってハートの形に見えたり、光の加減によっては超音波で捉えた胎児にも見えるそうです。
この穴を通って外に出ると噂に聞いた透明度の高いきらめく海が目の前に。リーフエッジには打ち寄せる波が水平線を太い白でなぞっていました。眺めの良い場所なので記念撮影にぴったりです。
ニャティヤ洞は沖縄戦の激戦地のひとつだった伊江島で大勢の住民が命をしのいだ場所としても知られています。奥行きがある広い洞窟なので地元では千人洞(せんにんがま)とも呼ばれています。東側にいくつか空いている穴から差し込む光のおかげで朝はまぶしくらいの明るさだったとか。
過去から未来へ生命を育みつなぐ場所
天井を見上げると本来は白いはずの石灰岩の岩肌が黒っぽく変色していることに気づきます。地元の方の話によれば、沖縄戦当時、避難をしていた住民達が料理のために煮炊きをした時の焚き火の煤の跡なのだそうです。
このように、新しい命が授けられ、いくつもの命が救われてきたニャティヤ洞。暗闇から光の世界へはい出るような地形といい、子宝祈願のビジル石の存在といい、過去から未来へと生命を育みつないでいく聖なる場所といえそうです。
※こちらは、公開日が2016年11月15日の記事となります。更新日は、ページ上部にてご確認いただけます。
スマートポイント
- 地元の人にとってはとても大切な祈りの場所です。訪れる際は、騒いだり、ふざけたりしないようにご配慮をお願いします。
- ニャティヤ洞の中は時間帯によって明るさが違います。おすすめの時間帯は午前中です。
- 南側の海沿いの道は比較的フラットなので天気が良ければレンタルサイクルでの移動が気持ちいいです。
ライターのおすすめ
子宝に恵まれたいという人が多く訪れるニャティヤ洞は、生命について考えさせられる場所です。できれば、公設質屋などの伊江島の戦跡や反戦平和資料館「ヌチドゥタカラの家」を先に訪ねてから来てみるとより深く思いを巡らせることができそうです。
福田展也
目下の趣味はサーフィン・沖縄伝統空手・養蜂。心で触れて身体で書けるようになることが10年後の目標。