沖縄自動車道の那覇ICから、車でおよそ1時間30分。緑滴る大宜味村に、ユニークな一棟貸しの宿がオープンした。沖縄にはリフォームした古民家や、古民家に似せた新築の建物を、宿泊施設として提供している所が多く、それぞれの個性を楽しめる。今回ご紹介する「MOK STAY OKINAWA」は、今までにない斬新な空間と、芭蕉布の里として知られる喜如嘉の集落に溶け込むように立地している点が大きな特徴だ。
観光
2017.02.02
古民家がスタイリッシュな宿に
集落で非日常を味わえるMOK
writer : 福田展也
サプライズを味わえる一棟貸しの宿
「MOKを選んでくださった方に非日常的な感動を楽しんでいただきたい。いい意味でゲストの期待を裏切りたいんです」
出迎えてくれたのは、「一度きりになるかもしれない沖縄旅行だからこそ、サプライズを味わってほしい」と語るオーナーの金城武典さん。
センメント瓦と赤瓦が葺かれた屋根は極めて沖縄的。プライバシー確保も兼ねた垣根を抜けると、鉄、無垢板、コンクリートを組み合わせたモダンな玄関が現れる。外人住宅を上手にリノベーションしたカフェは沖縄にはたくさんあるが、古民家をリノーベションした施設にはなかなかお目にかかれない。そういう点でもこの宿は価値がある。
ドアを開けると光と影のグラデーションが印象的な美しい空間が、外観から想像していたイメージを金城さんの言葉通り、心地良く裏切ってくれる。
ゴージャズでスタイリッシュ!沖縄らしさの新しい可能性
そのまま奥に進むと、大きめの浴槽が窓辺にしつらえられたバスルームが。既製のバスタブではなく、タイル貼り。ゆったりと体を伸ばせるのが実にうれしい。
トイレはドライフラワーや流木でシックにデコレーションされている。プロのスタイリストがコーディネートしたかのような空間演出が、施設のいたる所に散りばめられている。「絵を眺めるように、空間を楽しんでもらいたい」との金城さんの配慮が憎らしいくらいだ。
「素朴さとモダンさ、自然の美しさと人の手の巧みさ、古いものと新しいもの。喧嘩してしまいそうな要素を、自分なりにミックスさせてみました。沖縄独自の良さと沖縄にはない良さをかけ合わせることで、新しい価値が生まれるんじゃないかと。僕の祖父が暮らしていた家を使って、空家活用の可能性を探ってみたかったんです」
「例えば梁や屋根のように、何十年も価値が生き続けるものは、迷うことなく残し、壁などの内装や設備には新しいものを遠慮なく導入しようと考えました。自分の力を最大限に活用して、他の人にできない独自なものを作りたいと、県外で暮らしていた時に思うようになったんです。おじいちゃんが残したアイデンティティと自分の個性と地元の人の技術のいい所をミックスさせることで、他にはない唯一無比のものを表現したのがMOKなのです」
リノベーションにあたっては、施工は国頭村の工務店が、左官は今帰仁村など地元やんばるの職人さんが手がけ、設計は那覇を拠点に活動している伊佐直哉さんが担当した。室内の装飾には、『ディティールフル』のフラワーアレンジメントや沖縄在住の今村能章さんの器、宜野湾の『ワシテ』のルームフレグランスなど、金城さんのセンスでセレクトしたこだわりが活かされている。
内と外との境界が曖昧で、ときどき溶け合うような空間づくり
「当初は茶室としての利用を考えていたこともあって、リノベーションにあたってコンセプトというか、基本にしたのが、陰と陽、そしてわびさびでした」
リビングルームを進むと左手には和室がある。沖縄産のい草を使った畳の上に大きな引き戸から差し込む光が風流な明暗を描いていた。各部屋にはもちろん照明があるが、自然光でくつろいでみるのも楽しいかもしれない。
「この組子障子は島根の『吉原木工所』のものなんです。太陽の動きに合わせて、障子を通じて映し出される光と影が、朝から夕方にかけて変化していくんですよ」
ベッドルームとリビングルームを仕切る壁の下側には、日本を代表する組子の技術が活かされた障子が配置され、味わい深い表情を見せている。
ベッドルームは北東の角に配置されていて、日の出からしばらくすると、小さめのはめ込み式の窓から差し込む朝日がいい具合に差し込んできて、心地良い目覚めを促してくるだろう。
内と外との境界が曖昧で、ときどき溶け合うような空間づくりはMOKならではのもの。ぬかりのない組み合わせと絶妙な仕かけ。そしてこだわりをゲストに押し付けることのないさりげなさ。他では味わえない非日常的な滞在を楽しめそうだ。
[館内設備]
ミニキッチン(食器類、炊飯器、レンジ等)・洗濯機完備
[部屋設備]
備品:テレビ、インターネット接続(無線LAN形式)、冷蔵庫、ドライヤー、個別空調、洗浄機付トイレ、石鹸(液体)、ボディーソープ、シャンプー、コンディショナー、ハミガキセット、ブラシ、タオル、バスタオル、スリッパ
スマートポイント
- 「リゾートだけでない沖縄の魅力に触れてほしい」と金城さんがおすすめする、集落の奥にある七滝やMOKの向かいにある芭蕉布会館。集落をのんびり静かに歩くだけで、今まで気づかなかった沖縄の素顔に触れられるかも。歩いて行ける距離には喜如嘉の浜があり、天気がいい日には感動的な夕空を眺められます。
- キッチンには無水鍋が用意されています。集落内の「共同店」(沖縄独特の地域密着型の商店)で地元で採れた野菜を購入して、温野菜を楽しんではいかがでしょう。
- ベッドルームは雑魚寝を楽しめるように、セミダブルサイズのマットレスを4台並べてあります。一人での利用から家族での利用までいろんなニーズを満たしてくれそうです。
ライターのおすすめ
車ではなく徒歩で。古民家が軒を連ねる集落内をのんびり散策して、地元の人とおしゃべりを楽しんだり、コミュニケーションをとってみてほしいです。 MOKは集落内にひっそり佇む一軒だけの宿泊施設。地元の暮らしにお邪魔していることを忘れずに良い思い出を作ってください。
福田展也
目下の趣味はサーフィン・沖縄伝統空手・養蜂。心で触れて身体で書けるようになることが10年後の目標。
INFORMATION
スポット名 | MOK STAY IN OKINAWA |
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住所 | 沖縄県大宜味村字喜如嘉777-7 |
ジャンル | 宿 |
電話番号 | 050-3598-7656 |
料金 | 4,000円〜(4名宿泊時の1人あたりの税込料金) ※シーズンによって料金は変動します。 |
営業時間 | チェックイン15時〜(最終チェックイン24時まで) 、チェックアウト11時 |
駐車場 | あり |