公設市場が隣接する那覇の路地裏は
昔ながらの風景の中に、若いクリエイター達の店が点在し
懐かしさと洗練された空気が同居する、不思議な空間だ。
カフェや雑貨店の有志で運営する「ナハアートウォーク」では
期間中、各店舗の趣向を凝らした展示が楽しめ
地図を片手にまち歩きしながら、お店をはしごするにはもってこい。
たくさんの感性と出会い、お気に入りがきっと見つかる。
観光
2017.04.19
地図を片手にまち歩き
楽しみ満載ナハアートウォーク
writer : 松村葉子
食堂で出合ったのは“オカシナお弁当”
今年で4回目の開催となるナハアートウォーク2017。市場を中心とする那覇市内の飲食店や雑貨屋、古本屋など個性光る29店舗が参加し、期間中は各店舗でイベントや展示を開催。ユニークな参加店舗や展示を一部ご紹介。
健康に気を使った素材でお昼時の定食を提供するあめいろ食堂。「オカシナお弁当店」という企画、竹かごに入ったお弁当と、それを模した、ななんと、クッキー!。
ユニークな焼き菓子で知られる“北極”のクッキーは、自然の色を引き出すために低温でじっくりと焼き上げ、三温糖やてんさい糖を使用。
おいしそうなお弁当に思わず手が伸びそうに…まだまだこれから歩くゆえ、我慢!
開店前の忙しい時にも関わらず快く対応してくれた宇浦(ううら)さんご夫婦。お店の居心地良さに、ついつい長居したくなります。
子どもと一緒に楽しみたい、絵本屋さんのワークショップ
並木道の一角にある、えほんや hoccorie(ホッコリエ)は、大人同士でももちろん、この界隈にてお子様連れでも楽しく過ごせる貴重なお店。
店主が厳選する国内外の作家の品ぞろえに、初めて出合う絵本も多々。新たな世界の扉を開いてくれる。
イベント「100にんあーとdeへんてこzoo」では、訪れた人々が自由に動物を制作。壁一面に貼られた様々な表情の動物達。
旅行中たまたま来店したという京都からの親子連れ。お父さんと楽しそうにチョキチョキぺたぺた。良い旅の思い出になったでしょうね。
さて、てくてく歩いてこちらも別世界。トルコやモロッコ、ヨーロッパ、エキゾチックな雑貨とランチ&カフェを提供するLamp(ランプ)。「nico展」では、柄も形も遊び心溢れる、使い勝手の良い手作りバックを展示販売。
消えゆく文化に息を吹き込む銀細工
硬派なお店に出合う。
東京、パリなどの現場で活躍、著名なアーティストのアクセサリーデザイン等担当してきた大學清さんは、浮島通りにて沖繩手作銀細工「琉」工房兼店舗を構える。
「沖縄の文化を“銀”を通して発信していく」コンセプトに、みんさー織の柄をモチーフにしたアクセサリー商品も看板の一つだが、今回の企画におけるモチーフは“針突(ハジチ)”。
ハジチとは古来琉球諸国で女性の指や手の甲に施された入れ墨のこと。ハジチが残る存命の方がいらっしゃったら100歳をゆうに超え、その可能性は薄い。
大學さんは図書館に出向いてハジチに関する調査書や現地資料を綿密に調べた。どちらかというとマイナスイメージがあり、周知の低い文化かもしれない。しかし儀礼や魔よけといった、柄によって違う深い意味あいを知っていく中で、ハジチは女性達の誇りの象徴であったこと、その価値を再発見したという。
イチチブシ(五つ星)は“極楽に行ける”といわれ、ハジチのある多くの女性の手首に施されていた。
硬質な銀の質感、気品のある光沢にまろやかなカーブ。消えゆく沖縄の文化が生まれ変わった。
ゴッホのレシピ。エネルギッシュなアフリカの布地
ひと息入れたくなったところでSABORAMI「ゴッホのレシピ」。じゃがいものスープ、アイオリソース、プラニレというキャラメルナッツのお菓子、お酒はアブサン。アートウォークに合わせてゴッホが愛した料理を期間限定で提供。
にんにくとビネガーの効くアイオリソースを自家製りんごパンとともに。常設メニューでもあるりんごパンはバターの代わりにりんごを使用。ほんのりと品良く香り、滋養味あるじゃがいもスープとともに…美味!
ベジキーマカレーやいろどり美しい副菜の添えられたランチ、各種アルコール取り揃えるSABORAMI(さぼらみ)は、壁一色のグリーンが目印。店主の久高浩平さんの弟さんが経営する“たそかれ珈琲”も店内で味わえて、キッズルームもあり。
布地に散りばめられたエネルギッシュな色彩と出会う。
Masht star(マシットスター)はアフリカを中心とした世界各国のユニークな生地をとり揃え、一点ものの洋服や帽子をオーダーメイド。
企画展示は「カンガ布とことわざ展」。カンガとはストライプや水玉のような柄を示す言葉で、その時々で絵柄は違い、当時の大統領の顔が絵柄になったりもするのだとか。アフリカの珍しいことわざカードが布に隠されていて、おもしろかった〜
地域共生。イベントに力を注ぐ、参加店舗の思い
実行委員の一人、anshare(アンシェア)代表上原奨太郎さんのお話。
いろんな世代にとって魅力ある地域性があって、展示をきっかけに市場や地元の方々とも触れ合いが生まれる。まち歩きを通して「裏道っておもしろい!」と感じてもらいたい。
例年、各店舗が持ち回りで実行委員を担当し、毎回違ったテーマを設けて、変化のあるイベントを心がけているという。年々参加店舗が増えて規模が拡大する中で、密に連絡を取り合い、協力体制も充実している。
anshare(アンシェア)は、革やシルバー、真鍮や陶器といった工芸品を扱うセレクトショップ。工房も併設し、上原さんご自身がレザーや真鍮の職人という顔を持つ。
センス良い店構えのかたわら、近所のおじぃが「にーにー、これ直せるね〜?」とベルトを持ち込んだりするのだとか。
イケメン若手職人さんとお喋り。anshareでのお仕事に対するワクワク感がビリビリと伝わってきました。
企画展示「手染め革展」では、沖縄の青をモチーフに特殊な技法で染められた革製品が並ぶ。繊細なブルー、塗りなぐられたような線。革という素材の未知数。
アートウォークも佳境に。界隈は益々ディープ…
陶・よかりよでは「壁一面の景色 展」を開催。壁にかけられた大型皿に並び、目線よりもずっと高いところに絵が。直線だった線は歪み、違うものに見える…。
若手作家さんに制作の段階で「壁にかけること前提に皿を作って」とお題を出すことも。店主八谷(やたがい)明彦さんが取り扱う陶器は、質感や形状ともにみたことのないものばかり。枠をどんどん外してくれるお店。
壁に並ぶ一点一点の中に、小学校の図工で作った木版画版と思わしき存在に気づく。聞くと、久茂地川に落ちていて、拾い上げて泥をとったら不敵な笑みをした女性が出てきた、とのこと。これだから芸術はおもしろい。
クラクラしてきたところで、美術・工芸書の古書を取り扱う言事堂(ことことどう)企画「帰ってきた!ねこねこフェア」へ。猫をテーマにした古書がわんさか、癒される。
写真は茂木淳子さんのリトグラフ作品。店主の宮城未来(みき)さんがお話を書いて絵本を制作、発表の構想中というから楽しみ。
宮城さんが手にする一押し猫本は「チャペックの犬と猫のお話」。
小学生が「漫画置いてないの?」と毎日下校中に立ち寄る。地域の不審者情報は口伝えですぐに入ってくるという。言事堂の向かいは子ども食堂。
いやぁ、界隈、奥深い。
スマートポイント
- アート・クラフト系の44店舗が紹介された街歩きガイド“ナハアートマップ”は県内各所で配布中。(アートウォーク参加はマップ掲載中の29店舗)。
HP:http://www.artokinawa.com/ - お店が立ち並ぶ地域はすぐ近くに公園もあります。ご紹介した店舗はほんの一部。ご自身の足で出向いて、個性豊かなお気に入りの店舗を発掘してほしい。周辺には有料駐車場点在。
- 毎年11月頃に開催されてきたイベントだが、今年は試験的に春休みの時期に合わせて3月に開催。今後も暖かくなり始める季節の良い時期に開催していく予定。時期が近づいたらHPをチェックして。
ライターのおすすめ
懐かしいような風景の中に洗練されたお店が点在。若手の勢いの中にはお年寄りとの共存もあって。店主はいちいちおもしろい。強烈な個性とエネルギー、はしごにはクラクラしたけど、あー、楽しかった!
松村葉子
15年住んでいますが、沖縄はいつも深く濃ゆ〜く目の前に…。背伸びせず、面白いと思ったものを、ご紹介していきます。
INFORMATION
スポット名 | ナハアートウォーク2017 |
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ジャンル | イベント |
営業時間 | ナハアートウォーク2017は3月17日〜3月26日に開催。 |
駐車場 | 近隣に有料駐車場あり |
備考 | HP:http://www.artokinawa.com/?cat=205 |