無料区域の中にもいろいろ見どころがある首里城。
今回は龍樋と冊封七碑をご紹介しましょう。
龍樋は瑞泉門の手前にある首里城第一の湧き水です。
山の上なのに首里城に湧き水が豊富な理由は、
雨水がすぐに浸透する琉球石灰岩層の下に、
水を通さない粘土質の地層があり、
琉球石灰岩層と粘土層の間に地下水がたまりやすい構造のため。
1523年に北京で購入したと伝わる輝緑岩製の龍頭は、
第二次世界大戦でも鼻の一部が破損したのみで(修復済み)、
ほぼオリジナル。地上にあるものは
ほとんどが復元レプリカの首里城で、これは貴重な存在です。
観光
2025.01.28
墓石じゃありません!?
冊封七碑
writer : いのうえちず
王家の水、そのお味は?
かつて、この龍樋の水を使えるのは王族だけでした。
例外は中国から来る冊封使。約500年続いた琉球国ですが、
国王は明や清の皇帝の承認を受けて正式に即位するという
冊封体制下にありました。
皇帝の使者である冊封使は、第一級の国賓。
国をあげて「おもてなし」を行いました。
その一つが、那覇市西町にあった天使館(冊封使の宿舎)まで
生活用水として龍樋の水を毎日運ぶこと。
歴代の冊封使がその水を称えた書を石碑に刻んだのが、
龍樋の周囲にある冊封七碑です。
当時は外交の一環として、求められた時には
言葉や漢詩を書いて贈る習慣がありました。
本当においしい水だと思ったのか、それとも社交辞令なのか、
真実は七人の冊封使のみ知るといったところ。
冊封七碑って、こんな内容
現在ある七碑は拓本を元に1992年に復元されたもの。
内容は次の通りです。
中山第一(ちゅうざんだいいち)/水量、水質ともに琉球第一の泉である
書いた人:徐葆光(じょほこう)/
尚敬(しょうけい)王の冊封副使(1719年)
かつて北山・中山・南山の三つの勢力圏があった沖縄本島。
戦いの末に島を統一したのは中山王でした。
三山ともそれぞれ明と冊封関係にあって交易をしていた経緯から、
明・清とも琉球国王を中山王と呼んでいました。
雲根石髄(うんこんせきずい)/
山の高いところの穴から湧き出る石の乳である
書いた人:全魁(ぜんかい)/
尚穆(しょうぼく)王の冊封正使(1756年)
暘谷霊源(ようこくれいげん)/
東のはての日の出るところにある不可思議な泉である
書いた人:趙文楷(ちょうぶんかい)/
尚温(しょうおん)王の冊封正使(1800年)
趙文楷の書「育徳泉」は世界遺産・識名園(王家の別邸)で
も石碑に刻まれています。
活潑潑地(かつはつはつち)/
魚がはねるように水の勢いが極めて活発な泉である
書いた人:斉鯤(せいこん)/
尚灝(しょうこう)王の冊封正使1808年)
源遠流長(げんえんりゅうちょう)/泉は源が遠く流水が長い
書いた人:林鴻年(りんこうねん)/
尚育(しょういく)王の冊封正使(1838年)
林鴻年の書「甘醴延齢(かんれいえんれい)」の石碑は、
趙文楷の石碑と共に、識名園の湧き水の両脇を飾っています。
飛泉漱玉(ひせんそうぎょく)/
清らかな泉があたかも玉のように飛び散っている
書いた人:高人鑑(こうじんかん)/
尚育王の冊封副使(1838年)
霊脈流芬(れいみゃくりゅうふん)/
霊妙の水脈から出る薫り高い流れである
書いた人:趙新(ちょうしん)/
最後の琉球国王・尚泰(しょうたい)王の冊封正使(1866年)
1879年のいわゆる琉球処分後は
日本陸軍が首里城に駐屯していましたが、
1909年に首里城は首里区(後の首里市)に払い下げられ、
城内には首里第一尋常小学校などが置かれます。
龍樋の水は学校でも使われました。
第二次世界大戦後、首里城跡には1950年に琉球大学が開学。
龍樋の場所にはポンプが設置され、
学生たちの生活用水として活用されました。
歴史の荒波を経て蘇った「王家の水」。
そこにはさまざまなドラマが秘められているのです。
※こちらは、2015年3月24日公開の記事となります。更新日はページ上部にてご確認いただけます。
※記事中の写真、価格は取材当時のものとなります。

いのうえちず
沖縄に惹かれて2011年移住。沖縄の文化誌『モモト』副編集長。歴史・文化系の記事が得意。
INFORMATION
スポット名 | 首里城公園 |
---|---|
住所 | 沖縄県那覇市首里金城町1-2 |
電話番号 | 098-886-2020 |
料金 | 《入場料金》 大人400円 中人 (高校生)300円 小人 (小・中学生)160円 6歳未満無料 対象区域:有料区域公開エリア 現在、正殿等復興中の様子をご覧いただけます。詳しくは下記URLよりご確認ください。 |
営業時間 | ・城郭内無料区域8:00~19:30(7月〜9月20:30迄、12月〜3月18:30迄) ・城郭内有料区域8:00~19:00(7月〜9月20:00迄、12月〜3月18:00迄)※入場締切は30分前まで ・(首里杜館内)県営駐車場8:00~19:30(7月〜9月20:30迄、12月〜3月18:30迄) ・レストラン首里杜10:00〜17:00(L.O. 16:30) ・カフェ龍樋9:00〜18:00軽食のみラストオーダー17:30 ・ショップ紅型8:00〜18:00 無料対象区域:歓会門、木曳門、久慶門、継世門 有料対象区域:奉神門・世誇殿・東のアザナ ※2025年1月時点 |
定休日 | 7月の第1水曜日とその翌日 ※上記期間のみ一部休館 |
駐車場 | 大型車 30分あたり600円 最大料金2,400円 小型車 最初の60分400円 以降30分ごと200円 最大料金800円 |