終戦後から、沖縄の台所として重要な役割を担ってきた場所・・・
それが那覇市にある、農連中央市場事業協同組合、通称「農連市場」。
今回は、戦後沖縄の空気を色濃く残す、
バラック建ての大きな市場に迫ってみましょう。
観光
2015.03.22
消えゆく戦後沖縄の風景
最後の時を刻む農連市場
writer : 牧
街が眠りから覚めきらない時間に
まだ街には夜の香りが漂う、朝6時。
農連市場が最も活気づくのは業者が多く行き交う5時頃だそうですが、
沖縄の夜を楽しむことだって旅の大事な要素。そんな時間に来るなんて
とてもじゃないけどムリ!でもこの時間であれば、多少は現実的?
それに、この時間に農連市場を訪れるのは結構お得なんですよ。
ピークも終わり、一息ついた感のある市場内。
暗かったのでよく分からなかったんですが、光に照らされると
建物の古さがよく分かりますね!特に屋根なんかはどこを見ても
バラックで、たまに段ボールで補修されている場所もあるんです。
戦後を力強く生き抜いてきた人々の面影が、見て取れるようですね。
市場の中にある居酒屋。今日の仕事を終え(?)、
早朝からさっそく一杯ひっかける方もいるのかもしれません。
それ以外にも市場の敷地近くには、それぞれ24時間営業に、朝5時半閉店
という、営業時間帯が信じられないパン屋が2店舗あるんです。
話のネタに飛び込んでみるのもいいでしょう。
市場では何が売られているのか!?
それでは、市場で売られている商品をのぞいていきましょう。
うちなーおばぁが広げる露店には、沖縄らしいゴーヤーや
ナーベラー(ヘチマ)などの野菜が並んでいます。
昔は県内全ての野菜がここに集まったため、
農連市場は農業の聖地とも呼ばれていたんですって。
今は豊見城、糸満からの品物が多いんだとか。
ところで、市場内に露店を出すには当然場所代が必要なのですが、
いくらだと思いますか?
なんと、1日たったの300円!え、ホントに!?
平日毎日出店しても一か月6,000円ってこと!?
なんてお安い!!一瞬、出店したくなっちゃいました(笑)
おかあさんの手作業による、もやしのひげ取り。
農連市場ではもやし屋を多く目にします。沖縄では昔から野菜が
あまりなかったことや、収穫が台風に左右されないこともあり、
もやしが重宝されてきたそうです。
なるほど。だからチャンプルーには必ずもやしが入っているし、
飲食店で『野菜炒め』を注文すると、もやし炒めのようなものが
出てくるのかと、思わず納得。
売られているのは野菜だけではない
お弁当にはジューシーなカツや肉巻きに、野菜の炒め物がのっています。
気になるお値段は、270円!安い!!
沖縄のお弁当は、ご飯の上におかずが乗っているのが一般的。なんでも、
おかずでご飯が見えないほど売れる、という法則があるらしいのです。
うちなーんちゅのお得心をくすぐるんでしょうね。
並んでいるお惣菜は多種多様。そしてどれも値段がないのです。
この市場では元々、最初から値段を設定せずに売り手と買い手が
話し合って売買をする『相対売り』が一般的だったので、
その名残なのかもしれません。
農連市場の何がお得かって
6時から1時間ほど見回っているうちに、ほとんどの店舗
が店じまいに入ってしまった農連市場。
私は、これから本島で遊ぼうとする場合と、明日には沖縄を去る
というタイミングに、ここをおススメします!
なぜなら、朝から北部に移動する場合には、
早朝農連市場を訪れたついでに朝ごはんにすれば、
効率的で一日をより長く楽しむことができます!
早朝の飛行機で沖縄を去らないといけないけど、最後の夜も満喫したい!
という場合には、思い切って夜通し遊んで、
締めに農連市場を訪れるのもいいんじゃないでしょうか。
「それでもそんな早い時間は厳しいよ」
そんな声が聞こえてきますが、大丈夫。
朝が苦手なあなたにも、楽しめるものがここにはあるんです。
市場の敷地にある、何が出るか分からない飲料自販機!
お茶が50円からと異様に安いのも特徴で、
『前川清の笑顔まんてんタビ好キ』など、メディアでも紹介されています。
このオンボロ(失礼)自販機から果たして何が出てくるか・・・
試してみるのも楽しいと思いますよ!?
消えゆく運命にある市場
この市場が立つ区域は再開発が決まっていて、
あと1年ほどで取り壊しが始まってしまうそうです。
青写真を見てみたところ、モダンすぎるその様子に、
あまりにも残念の一言。
残された時間は、あと少し。
工事の手が入ってしまうその前に、
ぜひとも戦後沖縄の色濃い空気を味わいに、
ここ農連市場に足を運んでもらいたいと思います。
牧
JTRIP Smart Magazineライター。高知県出身、2006年より沖縄在住。